アメリカ・カナダ産牛肉の
輸入再開は許せない
食健連、農民連など撤回要請
関連/日本の死亡牛検査現場ではこんなに努力を…
政府は十二月十二日、BSE発生で停止していたアメリカ・カナダ産牛肉の輸入再開を決定しました。これは、「不安な牛肉は食べたくない。全頭検査を行え!」という国民の声を切り捨て、アメリカの利益を最優先に、わが国の食品安全行政を後退させるもので断じて許されません。
全国食健連、農民連、畜産農民全国協議会(畜全協)は十三日、農水省、厚生労働省に対して、「アメリカ・カナダ産牛肉の輸入禁止継続を求める緊急要請」をおこない、政府決定の撤回を強く求めました。
要請に先立ち、各団体は農水省前で「WTOは農業から出て行け、香港行動に連帯! アメリカ・カナダ産牛肉の輸入再開を許すな!」緊急集会を開催。「農家の声を聞け!」と畜全協の森島倫生会長や、群馬県農民連の住谷輝彦さんが「小泉農政は、農民にさらなる困難をなぜ押し付けるのか。これが消費者に軸足をおいた農政か。満身の怒りを込めて抗議する」と訴えました。
農水省・厚労省との交渉で、両省の担当者は「対日輸出プログラムの査察」を実施し、「食の安全・安心の確保に万全を期す」と説明。しかし、査察結果を待たずに十六日にもアメリカ産牛肉が輸入されることや査察場所も一部にとどまることがすでに明らかになっています。各団体の代表は「何のための査察か。査察とは名ばかりで実際は見学ではないのか」と追及。これに対して担当者は「アメリカ側が約束を守らないなら申し入れる」と答弁。参加者は「権限も強制力もない。まさにアメリカいいなりだ」と批判しました。
アメリカいいなりは危険です
検査員の報告聞き痛感
群馬農民連事務局長 目黒奈美子
群馬農民連は昨年、佐々木健三会長を招いて「BSE訪米調査報告会」を開催し、このなかで県家畜衛生研究所の主任研究員から「死亡牛検査現場の実態」について報告がありました。大変衝撃的でした。
大筋を紹介すると、「〇三年六月からBSE特措法により、二十四カ月以上の死亡牛検査がスタート。衛生試験場の敷地内に設備を新設し、職員三人、嘱託二人で開始以来七千頭を超える検査をしてきました。とくに延髄(えんずい)の採取は屋外での作業がほとんどで、冬は赤城おろしの寒さ、夏は炎天下、また安全性に留意しながら肉体的にも精神的にも大変過酷な現場です。感染防止のために、つなぎ服の上に防護服を着て、四十度以上にもなる中で腐敗牛との格闘です。死亡牛は胃にガスがパンパンにたまり、悪臭を放ち、特に肉牛は脂肪が水のようにトロトロに溶け、首を切断すると汚物とともに噴水のように飛び出します。BSEが早く撲滅されることを願いながら、現場で頑張っています」というものでした。
この報告を受けて、対県要請では「BSE全頭検査の継続と死亡牛検査現場の施設や労働条件の改善」などについて要求し、脱臭装置の増設や有資格者の増員など、一定の改善が図られました。
今回、政府が決定したアメリカ産牛肉の輸入解禁は、こうした現場の努力、消費者の声を踏みにじり、アメリカ言いなりに危険な牛肉を輸入するものであり、断じて許されません。
(新聞「農民」2006.1.2・9付)
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