旬の味
もう六十二年前、太平洋戦争の敗色濃い昭和十八年、農民出身の兵士の多くははるかなる山河に散り、兵士が不足していたので、大学・専門学校の文科系学生の徴兵猶予が打ち切られた▼東京音楽学校(現芸術大学)では十一月十五日、学徒出陣のための繰り上げ卒業式でベートーヴェンの第九交響曲を演奏したという。その六日後、神宮外苑(現国立競技場)で七十七校の学生二万五千人の出陣壮行会が開かれ、分列行進で音楽学校の吹奏楽団が演奏した。多くの学生が再び帰らなかった▼昭和二十四年十二月、音楽学校はやっと定期演奏会を日比谷公会堂で再開した。同大学『百年史』は、このとき合唱団が出演したと書いているから、これが戦没学生のレクイエム(鎮魂歌)として「第九」が演奏されたという根拠だろう▼その後、オーケストラ団員の越年資金のため「第九」が暮に演奏されるようになったといわれる。日本国民の間にはそれだけ平和への思いが深かったのだろう▼今、暮を控え、「第九」に憲法九条を思う。 (節)
(新聞「農民」2005.11.28付)
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[2005年11月]
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