演劇前進座「五重塔」職人の生きざまを描く
前進座の「五重塔」(幸田露伴・原作、津上忠・脚色)は、四十年前に初演されて以来、六百回を超える上演を重ねてきた劇団にとっては財産演目のひとつです。 一生に一度あるかないかという五重塔建立の大仕事――。江戸で名うての棟りょう・川越の源太が請け負うことになっていたこの仕事に、「ぜひとも自分に」と願い出たのは渡り大工の十兵衛。腕はあるのに世渡りが下手で、仲間から“のっそり”とあだ名される十兵衛が、「大工となって生きる以上は、一度でよい、死んでも名の残る立派な仕事がしたい」と思い詰めての申し出だったのです。源太は、恩も義理も忘れて自分を出し抜く仕業だと激怒しますが、考え悩んだ末、十兵衛に仕事をゆずろうと決心します……。十兵衛の一徹さ、源太の気風のよさ。職人としての意地と生き様、友情と信頼が描かれています。 今回は十三年ぶりの上演で、前進座の第三世代を中心とした新しい配役で挑みます。のっそり十兵衛に嵐圭史、川越の源太に藤川矢之輔、十兵衛の女房に浜名実貴、源太の女房に小林祥子という顔合わせです。 演出の鈴木龍男さんは「幸田露伴の原作は谷中(東京・台東区)の感応寺(現在は天王寺)の『五重塔』をモデルにしている。これは四十八年前に心ない心中者の手によって火をかけられ焼失している。その燃えていく五重塔の写真が残されていて、それを初めて見たとき、作った職人たちの悲鳴が聞こえてくるような気がした。そして今はその土台だけが残されている。その職人たちの生き様を、失われた五重塔に代わって舞台で語らねばならないと思う。だからこそ、今、新しい作品として再創造する意味がある」といいます。音楽や照明などもふくめて再構築された舞台に期待が寄せられています。 (鈴) *11月12日〜18日東京・吉祥寺・前進座劇場。28日〜12月1日浅草・浅草公会堂。7000円。連絡先=前進座Tel0422(49)2811
(新聞「農民」2005.11.7付)
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[2005年11月]
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