「農民」記事データベース20051107-707-09

「経営所得安定対策大綱」に抗議

二〇〇五年十月二十八日 農民連佐々木健三会長が談話


 一、十月二十七日、農水省は「新基本計画」の具体化である「経営所得安定対策等大綱」を打ち出した。

 日本農業を危機に追い込んできた政府自身の責任を棚上げした「大綱」の中に、困難のなかで懸命に生産を続け、地域農業を支えている農民の姿を見ることはできない。そこに貫かれているのは国際的孤立を深めているWTO協定の絶対視と財界の要求であり、輸入自由化をさらに進め、国際競争力に勝てない農家を切り捨てる冷酷な小泉流「構造改革」である。

 農民連は、戦後農政を最終決算する希代の農業破壊政策を打ち出した小泉内閣に強く抗議し撤回を要求するものである。

 一、大綱は、これまでの全農家を対象にした価格政策を全廃し、〇七年から「諸外国との生産格差の是正」と「収入変動による影響緩和」なる二つの基準による「品目横断的経営安定対策」を打ち出した。しかし、その対象となるのは、都府県で四ヘクタール以上、北海道で十ヘクタール以上の認定農業者・法人と、二十ヘクタール以上の特定農業団体などの「担い手」であり、全農家の一割程度にすぎない。圧倒的多数の農家は農政の対象から排除され、外国から輸入される安い農産物との競争に丸裸でさらされることになる。ここに「大綱」の最も冷酷な姿勢が現れている。

 今、日本の農業にとって担い手を増やすことこそ焦眉(しょうび)の課題である。国内産の農産物を求める国民の願いに応えて食料自給率を向上させるうえで、三百万近い農家に対する支援は不可欠である。「大綱」は農村地域社会にも重大な影響を及ぼすことになる。

 一、「品目横断的経営安定対策」では「担い手」の経営を維持することはできない。WTOやFTAによって関税が引き下げられればアメリカや中国からの輸入原価との競争にさらされることになる。価格保障を否定して「品目横断的経営安定対策」を実施しても、それは、「経営安定対策」の名に値しない。

 一、農業と工業の違いをわきまえず、「効率化」を唯一の基準にすることほど愚かなことはない。農地と耕作する農民が存在してこそ農業は成り立つ。失ったら取り返しのつかない農業の本質を顧みない亡国農政を拒否する。

 農民連は、多様な形態の家族経営を対象にした価格保障と直接支払いによる経営安定対策を要求する。同時に、地域農業を発展させるため自治体や農協、広範な関係者との共同を強め自主的助け合いによる生産の拡大に全力をあげるものである。

(新聞「農民」2005.11.7付)
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2005年11月

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