「農民」記事データベース20051031-706-05

新基本計画で麦・大豆の交付金削減

どうなる! 学校給食 食料自給率

対象を大規模農家だけに


カットを機にやめる農家も

 新「食料・農業・農村基本計画」では、二〇〇七年産から、麦・大豆の交付金について、これまですべての農家を対象にしていたものを、一定の要件を満たす農家に限定します。これによって学校給食や食料自給率はどうなるのか。小麦の主産地、埼玉、群馬両県をみてみました。

 日本の麦や大豆には、外国との生産条件の違いを穴埋めするために、一定の交付金がでています。麦は麦作経営安定資金、大豆は大豆交付金です。ところが、新基本計画で、交付金の対象が、都府県については面積四ヘクタール以上、北海道は十ヘクタール以上の認定農業者または二十ヘクタール以上の集落営農組織に限定されようとしています。

 麦をみると、六十キロ当たり、市場販売価格で二千三百円、交付金が六千九百円となっており、ようやく九千二百円になります。これでも一〜三ヘクタール規模の生産費(約一万円)を償うものではありませんが、交付金が受け取れないとなると、農家は大変です。埼玉県熊谷市で麦を七十アール作っている中島仲子さんは「交付金があったからこそ、肥料代などにあてることができ麦を作ることができました。もらえなくなれば、作るのをやめてしまう農家が増えるでしょう」と不安を訴えます。

 埼玉県農林部農業政策課の前田敏之副課長は「体制作りをしっかりやっていきたい」と強調します。まず認定農業者を作り、該当しない規模の小さな農家や兼業農家を集落営農で救う考えです。

 しかし、県内の麦作農家数は六千四十一戸。そのうち三ヘクタール以上の作付面積をもつ戸・集団数は二百二十四で三・七%。三ヘクタール以上の農家でさえ四%にも満たない状況です。認定農業者や集落営農で網羅できない農家はどうなるのか。交付金の対象からもれたのを機に麦作りをやめ、麦作農家が減ったら「(小麦の)自給率にも響く」(前田副課長)ことになりかねません。

 埼玉県は、県内農産物の地産地消を積極的に進め、二万トンの小麦生産量のうち二千トンを学校給食に使っています。埼玉農民連や食健連など県民の運動で実現した県産小麦一〇〇%使用のパン「さきたまロール」「さきたまクーペ」など、新商品も年々増えています。

 埼玉県学校給食会の高鷲幸助常務理事は「子どもたちも大喜びです。学校給食を通じて農業や地域に関心を持ってくれます」と効果を語ります。小麦以外にも県産大豆で作った彩花しょうゆ、彩花みそなど、種類も豊富。「もっと大豆を作ってほしいぐらい」と話す高鷲常務理事は、交付金カットで生産者がさらに減ることを心配します。

 もう一つの小麦の主産県、群馬県も事情は同じです。「時間がなく、たいへんな状況」と訴えるのは、JA群馬中央会の高橋清農業対策部部長。JA群馬は、農家への情報提供のために説明会を各地で開催。農家から「小農切り捨てだ」「これでは自給率は上がらない」など不安の声が相次いでいます。

 交付金カットで麦・大豆作りの代わりに、米作りを始める農家が増えることも考えられます。そうなれば、米がさらに市場にあふれ、「価格安定は夢の夢」(高橋部長)です。

(新聞「農民」2005.10.31付)
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2005年10月

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