「農民」記事データベース20051017-704-01

産地廃棄しても止まらない

野菜暴落 農民悲鳴

輸入急増が原因

 野菜産地から、ひどい価格の低下ぶりに悲鳴の声が上がり、自殺者まで出ています。キャベツ・ハクサイ・レタスは、何度となく産地廃棄しても価格が回復しません。一方、生鮮野菜の輸入量は洪水的。今年の上半期(一〜六月)は昨年同期比で、四二%も増加。すでに過去最高だった〇一年の年間輸入量の約七割に達しています。国内の産地では野菜をつぶし、農家は低価格にあえいでいるのに、海外からの輸入は増える。まさに本末転倒! どこに「日本農業を守る」農政があるのでしょうか。


セーフガード発動を

 国内産の価格は昨年の半値以下

 キャベツ三倍、ニンジン・カブ三倍、レタス一・六倍、タマネギ一・六倍…。昨年同期と比べた今年上半期の輸入野菜の急増ぶりです(表)。キャベツの輸入量 は、昨年の七万一千トンを上半期だけで迫るほど。いっぽう、国内産の卸売平均価格は、昨年の半値以下、一キロ当たり四十四円(図1)、農家手取りは、一箱十キロで「わずか二十円」。今年に入って、キャベツ・レタス・ハクサイは、長野県をはじめ八つの道県で合計三万八千トンも「産地廃棄」され、「これだけ廃棄しているのに、なぜ価格が上がらないのか」と、怒りの声があがりました。輸入急増が価格暴落の原因であることは明らかです。

表 2005年上半期の生鮮野菜輸入量

図1 キャベツの輸入量と卸売価格

 七月こそ、国産の価格低迷でさすがに輸入量も減少しましたが、八月にはまた三一%増に。とくにタマネギの一・三倍、ニンジン・カブの二・二倍、ネギの一・三倍などが目立ちます。

図2 ネギの輸入量と卸売価格 このうちネギは、毎月コンスタントに昨年を三割ほど上回っています。ネギ輸入量 は、昨年七万トンを超え、今年はさらに上回る勢いで推移(図2)。ネギの月別 輸入量は、従来「四〜八月が少なく、十一月〜翌年二月が多い」パターンでしたが、〇三年からこのパターンは崩れました。業務用に中国から周年的に輸入する開発輸入のシステムが作られたからです。

 セーフガードで暴落をふせいだ

 しかし、ネギでは一度だけ輸入量が減少した年があります。それは、暫定セーフガード(緊急輸入制限措置)が発動された二〇〇一年。農民連・食健連は、輸入急増をストップさせようと、産地自治体や農協にも呼びかけ、セーフガードの発動を強く求めました。政府は、こうした声に押されて、「暫定」ながらもはじめてセーフガードの発動に踏み切ったのです。

 「今年に入ってから、いくつかの生鮮野菜の輸入は、これまでに例をみないほど洪水的」(日本農業新聞)といわれるいまこそ、セーフガードの発動に向けた本格的な監視体制が求められます。埼玉県熊谷市妻沼のネギ生産者・森恒男さん(56)は、「ずっーと安値安定だが、中国からの輸入がさらに増えれば、秋・冬ネギの暴落は必至。三年前の暫定セーフガードでは、暴落を防ぐことができた。ぜひとも輸入規制が必要だ」と、切実です。

 専門機関がなくスタッフも兼務

 こうした時に農水省はどういった対策をとっているのでしょうか。担当の国際部貿易関税課に聞いてみました。この五月に「セーフガードに係わる情報収集モニタリング体制の整備」を実施、品目を特定して、セーフガードの検討に必要な情報を常時収集しているそうです。月ごとに輸入量や価格、生産状況などを取りまとめる〈レベル2=緊急監視対象品目〉に指定されている野菜は、ネギ・生シイタケ・トマト・ピーマン・タマネギ。四半期ごとに取りまとめる〈レベル1〉に指定されている野菜は、ニンニク・ナス。ところが、こうしたデータを公表するのかというと「公表しません」。セーフガードを発動するかどうかの基準はあるが、「公表できません」。だれが発動を決めるのかと問えば、「各品目を担当する部署」。これでは、特定の官僚が、財務省や経済産業省、輸出国の顔色をうかがいながら、暗闇・密室でゴソゴソと話し合っている姿しか想像できません。

 諸外国は、セーフガードの発動に対して、どういう体制でしょうか。アメリカやカナダ、韓国には、行政府から独立した機関とスタッフが整備されています。たとえばアメリカでは「国際貿易委員会」という政府機関があり、情報もすべて公開されています。だから一九五〇年からこれまでの間に三十三回も発動しているのです。ところが、わが国には専門機関もなくスタッフは兼務、セーフガードは“残業”でやる仕事というわけです。

 農民連が10・26に一斉農水省交渉

 農民連は十月二十六日、農水省に対して「セーフガードを発動せよ。そのために本格調査を緊急に行え」と要求します。セーフガードにかかわる政令では、「産業所轄大臣は、利害関係を有する者の求めがあることその他の事情を勘案してセーフガードの発動を検討する」とあります。農水大臣に、輸入によって暴落している品目の被害額を突きつけ、農水大臣に「セーフガード発動請求」を行いましょう。

(新聞「農民」2005.10.17付)
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2005年10月

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