不足しても“水より安い”
いま世界では上がり続ける米価
アジア 農民の要求に基づく政策的なテコ入れ
暴落しっぱなしは日本だけ
二十一世紀に入って世界の米価は毎年上がっているのに、米価が下がりっぱなしなのは日本だけ――。「水より安い米」が消費者の驚きを集めていますが、米価の異常ぶりは国際的にもきわだっています。
世界の米相場を規定するタイ米。最も標準的な商品である砕米一〇%入りうるち精米の価格は二〇〇一年以降、判で押したように毎年上がり続け、この五年間の最安値と最高値を比べると、一トン百七十ドルから三百二ドルへと一・七八倍(図1)。
一方、日本の米価は凶作になった二〇〇三年を除いて下がりっぱなしで、九〇〜九二年と今年を比べると三二%ダウンの〇・六八倍(図2)。
世界の米価は九〇年代後半から下がり続け、二〇〇〇年で底を打って上昇に転じましたが、日本はほぼ下降一直線で、まったく対照的です。
上昇の背景には不足と政策要因
世界米価上昇の背景にあるのは、米不足と政策要因です。
図3のように、二〇〇〇年まで、米の世界生産量
が消費量を上回る“米余り”状態が続いてきましたが、二十一世紀に入ると、一転して米不足状態に。中国南部のインディカ米の減産やアジアでの米消費の拡大など、要因はさまざまですが、五年連続して不足状態が続いています。
これに、日本を除くアジア各国の米支持価格引き上げ政策が加わって、米価が上がっていることはまちがいありません。
不足のときには価格が上がるという市場の作用と、農民の要求にもとづく政策的なテコ入れ――これが世界米価上昇の要因です。
政府自ら暴走、市場原理壊し不足でも暴落へ
「市場の失敗」と備蓄米の販売…
一方、日本は、不足になれば米価は上がるという“市場原理”に逆行し、“余ったときは暴落し、不足のときも米価は下がる”という実態です。
なぜこんなことに?
「市場の失敗」に加えて「政策(政府)の暴走」があるからです。(1)食管制度を廃止して米価支持をやめたこと、(2)WTO協定で米の輸入自由化を受け入れ、外米をだぶつかせたこと、(3)さらに政府が備蓄していた古米の大バーゲンセールを行って、米価の足を引っ張り続けたこと――政府の暴走の罪は万死に値するといわなければなりません。
05年「過剰米」の処理価格 買いたたきの役割果たすのみ
二重三重に米価回復とは縁遠い
九月十五日現在の作況は平年作に近い「一〇二」。いま、政府は「豊作だ」と騒ぎ立てて、「過剰米」を一俵六十キロ三千円で加工原材料用に“収用”するための「集荷円滑化対策」を初めて発動する準備に大わらわです。
「過剰米」を市場から隔離し、平年作状態にして需給を均衡させれば、市場原理が働いて米価は回復するはずだという理屈です。しかし、政府自身が市場原理を壊し、不足でも米価暴落が続く状態を作り出しておいて、よくもこんなことが言えたものです。
しかも「過剰米」の処理価格は三千円。これは買いたたきのターゲット価格の役割をはたすことはまちがいなく、二重三重に米価回復とは縁遠いといわなければなりません。
(新聞「農民」2005.10.10付)
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