やっぱり、郵政の次は農協!総合事業の分割再編に加え「全農つぶし」提案も
規制改革会議中間報告「農協解体」提言の詳報財界主導による「農協解体」は、総合農協がとりくむ信用・共済・経済事業の分離・分割にとどまらず、全農に販売事業をやめさせ、組織の大幅縮小を求め、独禁法を適用させるばかりか、世界の協同組合運動で百六十年以上守られてきた「一人一票制」の議決権という、協同組合の生命とも言える民主的運営の基本原則さえも侵し、破壊する悪質な協同組合つぶしの内容となっていることが明らかになりました。
文章化済みではもみ消ししても七月二十九日に公表予定だった規制改革・民間開放推進会議(議長・宮内義彦オリックス会長)の中間報告は、参議院での郵政民営化法案対策やその後の総選挙への影響も配慮され、公表が延期されてきました。ところがこの問題は、選挙中にも農村地域で大きな争点の一つに浮かび上がり、あわてた自民党は「日本農業新聞」の全面広告で否定してもみ消す姿勢を見せました。しかし、すでに文章化も完了済みの中間報告書は、否定ももみ消しようもありません。
営利目的の企業への変質を要求農民連本部が、この中間報告書案を入手し、分析した結果、とんでもない協同組合攻撃の実態が明らかになりました。まず問題になるのは、中間報告が「問題意識」として、農協を「多様なサービス提供主体」の一つと見て、競争の促進や合理化・効率化推進を求め、「農協自身が合理的な経営体に変わる必要がある」として、協同組合原則を否定するよう求めていること。農協が「協同組合として、正組合員の一人一票制による意思決定が行われるシステムとなっていることなどから、大規模農家よりも多数の零細兼業の農家の利益が重視される傾向がある」と述べて、他の営利目的の企業と同じ「合理的経営体」への変質を要求しています。 これは、十九世紀半ばの資本主義経済が始まったころ、その利潤追求優先という、人間性を無視したあり方を批判して、「人びとの要求実現のための自治的な協同組織」として創出された協同組合の独自の存立意義を否定する暴論です。
家族経営無視の総合事業の解体また中間報告は、その「具体的施策」で農協の分割再編を強調しています。銀行や保険会社で他業禁止が行われていることを理由にして、農協でも各事業を「別の法人組織として独立して運営」するよう要求し、 「事業ごと分割再編」を提言しています。農協の総合形態は、アジアの小規模水田農業と家族経営を背景にして成立しており、欧米の大規模畑作経営とは異なる根拠をもっています。家族経営の総合性が、対応する協同組合形態に反映して発展したものです。中間報告の農協「分割再編」論は、こうした背景をまったく無視したものです。
市場支配の拡大狙う露骨な攻撃近年の「全農つぶし」攻撃は、農水省が公式ホームページに全農への「チクリ掲示板」を設置するほど、政府・財界が一体となって取り組んできた、驚くほど執念深い企てです。財界が全農に対して持つ「恨み」ばらしといっても過言ではないでしょう。中間報告は、全農から販売事業を取り上げ、組織縮小を要求し、独禁法の適用除外からもはずそうとしています。これらは農村市場や農産物市場の支配権を拡大しようとする財界の露骨な攻撃にほかなりません。 もちろん全農には多くの問題があります。経済連との統合で、全国の不正事件すべてに責任を持たされることにもなっています。しかし、その解決は、農協運営の主権者である農民・組合員の義務と権限であり、政府やまして財界にその方向づけをする権限は何もありません。 いま農協組合員は、協同組合の組合員としての主権回復が求められています。その活動は、財界主導による政治から国民主権を回復し、農政改悪に対抗して地域農業を発展させることにもなります。
(新聞「農民」2005.9.26付)
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[2005年9月]
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