食と農を守る青森の会シンポ火傷病やっぱり怖い!!
「火傷病はやはり怖い病気だ」「一般の庭木、街路樹に感染した場合、対応できるのか」――。梨やリンゴなどに壊滅的な被害を与える最重要病害「火傷病」。この問題を考えるシンポジウムが八月三十日、青森県藤崎町で開かれました。食と農を守る青森の会が主催し、近隣の農協、自治体、弘前大学農学生命科学部など十七団体が後援・協賛しました。
“侵入したら”庭木、街路樹でも拡大政府の防除対策の遅れ明らかに生産者、自治体・農協関係者130人アメリカ産リンゴに対する日本の火傷病検疫措置がWTO(世界貿易機関)協定違反に問われ、日本の敗訴が確定した直後とあって、農繁期にもかかわらず、リンゴ生産者、自治体、農協関係者ら百三十人が参加。パネリストの報告に対して活発な質疑応答が続きました。パネリストの藤田孝二県南果樹研究センター所長がまず、火傷病の概要を説明。「外観上、健康にみえる果実にも火傷病菌が潜んでいる可能性がある。しかし、それから感染するかは別問題。食べカスで菌が増殖するかどうかはわからない」と述べました。 続いて、佐藤成良農水省植物防疫所統括調査官が火傷病の感染実験の結果を報告。「成熟したリンゴ果実に付着させた火傷病菌は増殖・移動し、五十〜六十日間の冷蔵保管の後でも残っている。ハエを介してリンゴから梨に火傷病が広がることも確認された」ことを明らかにしました。
果実の成熟度検査だけに変更日本の検疫体制について、WTOの裁定は、「成熟した病徴のない果実」から火傷病は広がらないというアメリカの主張を認定。そのため従来の検疫措置はすべて廃止し、果実の成熟度検査のみになりました。これに対して、宇野忠義弘前大学教授は「日本が検疫緩和に従わない場合、アメリカは百五十五億円の報復関税を申請しているが、これにはまったく根拠がない。検疫措置を維持して報復関税の交渉に入るべきだ」と、日本政府の対応を批判しました。 また、青森県りんご果樹課の葛西弘光課長は「小売店で未成熟の果実が売られていないか調査が必要。青森県版の防除対策をつくる必要がある」と、現場での対応を強調しました。
国の対応の手ぬるさ、検疫廃止に批判の声も火傷病の防除に登録農薬はない質疑では、万一、日本へ火傷病が侵入した場合の防除対策「火傷病アクションプラン」の内容に質問が集中しました。火傷病は梨、リンゴだけでなく、ナナカマド、コトアネスター、サンザシなどバラ科の一般の庭木、花木類にも感染します。それだけに、「生産者が火傷病の侵入を警戒するだけでは不十分。非農家の庭木、街路樹、放任園での対策はできるのか」といった、緊急防除の具体策についての懸念が出されました。これに対して佐藤氏は「今後の研究・調査課題。アクションプランがまとまれば、意見を求めることになる」と回答。国内対策の遅れが鮮明になりました。 「プラン」では、火傷病発生樹の周囲五百メートルを重点防除地域に指定し、宿主植物の移動禁止、薬剤散布などをおこなうことになっています。佐藤氏は「日本に火傷病は存在しないので登録農薬はないが、緊急防除では登録のない農薬も使用できる」と説明。しかし、農水省は「成熟した病徴のない果実」は移動(出荷)可能としており、だれが果実の成熟度を判定できるのか、無登録農薬を散布した果実を流通できるのかという問題が出てきます。
広く国民に知らせる必要があるシンポジウムでは直接議論になりませんでしたが、火傷病の感染経路を解明する実験はもっと注目されるべきです。また報復関税の不当性、WTOの裁定を無条件に受け入れる日本の対応も問題にされるべきです。参加者からは「国の対応の手ぬるさを感じた」「火傷病にかかった樹木の隣の果実でも、成熟していれば輸入できるのは脅威だ」「火傷病アクションプランは不十分」「火傷病を知らない人が非常に多い。一般にも広く知らせることが必要」などの感想・意見が寄せられました。 (青森県農民連 須藤宏)
全国食健連05年度全国代表者・活動者会議
(新聞「農民」2005.9.19付)
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[2005年9月]
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