「農民」記事データベース20050905-698-05

食品安全委員会 審議の特徴と行方(下)


対象牛を限定し実効性を評価できるか

 厚労・農水の両省は、「日本向け輸出プログラム」にそったアメリカ・カナダ産牛肉の安全性の評価を、食品安全委員会に諮問しています。この「プログラム」は、(1)すべての牛からSRM(特定危険部位)を除去する施設で製造された牛肉のうち、(2)牛の月齢が二十カ月齢以下だと証明できるもの、あるいは肉質がA40以下と判定されたもののみ輸出を認めるというものです。

 交差汚染の可能性

 両省がこのように評価の対象牛を限定したのは審議時間の短縮をねらってのこと。しかし、プリオン専門調査会は、まず両国の全体のBSE汚染度を調べたうえで対象となる牛肉の安全性を評価することに決めました。

 いま進められている作業はこの前半。アメリカ・カナダの国全体の汚染度を調べるために、イギリスなどからの生体牛や肉骨粉の輸入量、飼料規制やサーベイランス検査、SRMの除去などについての資料を集めている段階です。

 この間の審議で重要なことは、第一に飼料を通じて感染が広がる「交差汚染」の可能性があると正式にみなしたこと、第二に両国の検査には感染牛の見逃しがあるとの前提で審議することを確認したことです。

 答申の素案づくりを担当する山本茂貴委員(国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部長)は、アメリカの肉骨粉の製造方法を「BSE増幅の可能性大」と断定し、交差汚染の可能性については「農場での交差汚染はあり得る」としました。

 検査方法については、北本哲之委員(東北大学教授)の要求で農水省が作成した資料によると、仮に日本がアメリカと同じやり方でしか検査しなかった場合、国内で発見されている二十頭のBSE牛のうち十五頭まで見逃された可能性があることが示され、あらためて同国の検査のズサンさが浮き彫りになりました。

 千件超す違反事例

 また、八月一日のプリオン専門調査会には、委員限りの非公開でアメリカの検査についての資料が示され、吉川泰弘座長は、検査された牛の九割以上が三十カ月以上で、約八五%が乳牛であることを明らかにしました。

 これまでの審議で言えることはアメリカのBSE汚染度はけっして低くないということ。そして、今後は「プログラム」にもとづく規制が本当に守られるのかということも審議の対象になります。

 考えられないような不手際が相次ぎ、情報の不透明さも問題になっているアメリカのBSE対策。八月十五日には、SRM除去をめぐる千件を超す違反事例も見つかっています。

 「プログラム」の実効性について、厚労・農水省は「行政側で責任を持つ」とし、寺田雅昭・食品安全委員会委員長も「一〇〇%(守られるもの)として評価してほしい」と述べていますが、プリオン専門調査会の委員からは異論も上がっており、今後の審議を注視しなければなりません。

(おわり)

(新聞「農民」2005.9.5付)
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2005年9月

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