演劇
こまつ座第78回公演「小林一茶」
破格のナゾ解き評伝劇
井上ひさしの代表作を再演
こまつ座が上演する「小林一茶」は、井上ひさしの代表作品のひとつに数えられている、作者ならではの趣向をこらした舞台です。
「小林一茶」は題名のとおり、江戸期の俳諧師・小林一茶の評伝劇です。座付き作者の井上ひさしがこまつ座創立以前の一九七九年に執筆し、八〇年に五月舎プロデュース「江戸三部作連続公演」の「薮原検校」「雨」につづく「其の三」として初演。こまつ座でも九〇年に上演、高い評価を得ました。この戯曲は第三十一回読売文学賞、第十四回紀伊国屋演劇賞を受賞しています。
「小林一茶」には、この「小林一茶とはいったいどんな人なのか」という一種の謎解きに似た楽しさがあります。そして、この謎解きを彩るのが劇中劇、迷句珍句の言葉遊びやドンデン返し、さらに小林一茶の評伝劇でありながら一茶自身はまったく登場しないという大趣向です。
食い詰め者の俳諧師が捕まりました。容疑者の名は小林一茶。「十両盗っても首が飛ぶ」といわれた文化十年十一月の江戸。蔵前札差井筒屋八郎右衛門の寮から四百八十両の大金が消えたのです。容疑者一茶の身元調べに当たるのは新米の同心見習五十嵐俊介、もと狂言役者。一茶をよく知る鳥越界隈に住む人たちの証言をつなぎあわせてゆくうちに、一人の女性をめぐって競いあった一茶の宿敵竹里(ちくり)の壮絶な半生が浮かびあがってきます……。
今回は十五年ぶり、キャストを一新しての公演。五十嵐俊介(小林一茶)に北村有起哉、竹里に高橋長英、なぞの女・お園にキムラ緑子、そのほか松野健一、小林勝也、柴田善之らが出演します。高橋長英さんは「『小林一茶』はまだ読んだだけだけれど、珍しく自分の中にすっと入ってくるようで、気持ちの良い作品だった。わずか十七文字で宇宙を生み出す俳諧師が主人公というのも、言葉にこだわる井上さんに重なるようで良いでしょう? それに一茶役の北村有起哉君も気になってた役者だから楽しみで」と語っています。演出・木村光一氏。
(鈴)
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*9月8日〜25日、東京・新宿・紀伊國屋サザンシアター。5250円。連絡先=電話03(3862)5941
(新聞「農民」2005.9.5付)
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