「農民」記事データベース20050822-697-04

食品安全委員会 審議の特徴と行方(上)


輸入再開へ利用される不満

 アメリカ・カナダ産牛肉の輸入再開について審議している食品安全委員会プリオン専門調査会。五月末に厚労・農水両省が諮問してから、四回の審議が経過しています。この間、委員からは、アメリカで二頭目のBSE牛が発見されたことを受けて「諮問を取り下げるべきではないか」といった意見が出るなど、審議のあり方に不満が続出。その一方で、答申のたたき台づくりも進められています。審議の特徴と今後の行方を見ました。

 方針転換したのか

 八月一日に開かれた同調査会。欠席した横山隆委員(動物衛生研究所プリオン病研究センター研究チーム長)は文書で意見を提出しました。その内容は、政府はBSE発生国から牛肉を輸入しないという方針をいつ転換したのか、諮問は取り下げないのか、というもの。

 これに対して農水省の担当者は、輸入禁止は暫定的な措置で、科学的な根拠にもとづいて措置を講じることがWTO・SPS協定に則した手続きだ、と説明しました。

 これは要するに相手が汚染国であろうとも輸入再開の要請には応じなければならないということ。“清浄国(BSEが七年間未発生)でなければ輸入を認めない”という前言をひるがえし、WTO協定を持ち出して輸入再開を正当化するもので、極めて重大です。

 調査会の山内一也委員(東京大学名誉教授)は、食健連が開いたBSEフォーラムで「貿易の妨げになるという理由で全頭検査が見直される事態は何としても回避すべきだ」と述べました。また、横山委員と同様の意見は六月二十一日の調査会で甲斐知恵子委員(東京大学教授)も述べています。

 政府が責任を放棄

 そもそも食品安全委員会は、輸入牛肉など食品の安全性を評価する場であり、輸入再開の是非を論じる場ではありません。委員会の答申をもとに是非を判断するのは、リスク管理官庁である厚労省など政府です。しかし政府はリスク管理責任を放棄して輸入を再開しようとしており、そのために委員会を利用しようとしているのです。プリオン専門調査会の委員の間には、こうした政府のやり方への不満が充満しているといえます。

 金子清俊座長代理(東京医科大学教授)は、五月三十一日の調査会で、「なぜ輸入再開するのかというところにだけ科学的評価に基づいてと(使われる)懸念も(ある)」と率直に述べました。今、「国民の命と健康をないがしろにするな」「輸入禁止の継続を」の世論をさらに高め、政府の姿勢を変えることが何より重要になっています。

(つづく)

(新聞「農民」2005.8.22付)
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2005年8月

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