「農民」記事データベース20050815-696-14

アメリカに大きな波紋

中国のリンゴ輸出(下)

デビンダ・シャルマ(寄稿)


攻撃的に新市場進出 ねらうアメリカ業界

 アメリカのリンゴ業界は、卑劣な泣き方をしている。アメリカの農家が価格で競争するためにいかに努力しても、中国の労働者の一時間あたり二十五セントという法外な賃金に勝つすべはない。アメリカの農家は、中国のリンゴ栽培現場で、大量の農薬が使われていると指摘しているが、中国産濃縮リンゴジュースを輸入し、加工、販売する業界はこうした農家の指摘に消音器をつけているようだ。

 USDAは、生鮮リンゴ輸入に伴って侵入が心配される三百の害虫と病気のリストを提示した。中国はすでに回答し、解決されるのを待っている。USDA担当官は、中国の園芸と病理学の専門家と数次にわたる討論を行ってきており、アメリカが中国の生鮮リンゴの輸入を認めるのは時間の問題だろう。アメリカの国内農業を保護する政策が取り除かれ、アップルパイに中国産リンゴが使われるようになれば、消費者が利益を得ると、中国は宣伝している。

 一方、アメリカのリンゴ業界は、攻撃的なマーケティング・モードに入っている。悪名高い二〇〇四年農業法によるマーケット・アクセス・プログラム(MAP)のもとで、二〇〇六年度に二億ドルの輸出開発基金の追加を要請してきた。一九八六年以来、この業界は、毎年三百十万ドルの輸出開発基金を受け取ってきた。これら輸出強化支出は、アメリカが毎年支出している膨大な農業補助の一部である。一方、ヨーロッパでは、一九九八〜九九年に約二十億ドルの補助金をリンゴ生産者に配分している。

 世界のリンゴ生産者は、中国とアメリカのリンゴ業界が、新たな市場を得ようとねらっていることに気をつけなければならない。この警告は、大声ではっきりと聞こえるようになってきた。

(インドのフリージャーナリスト)
(おわり)

(新聞「農民」2005.8.15付)
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2005年8月

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