WTO
香港閣僚会議へ向けた“第1次案”
一般理事会(7/29)が策定断念
食糧主権を守る立場から
ビア・カンペシーナが声明発表
「二〇〇三年のメキシコ・カンクン閣僚会議に続き、再び決裂する懸念が高まってきた」(「日経」7月30日付)といわれるように、WTO交渉の混迷ぶりが浮き彫りになっています。
香港での合意は「可能」と強がり
七月二十九日に開かれたWTO一般理事会(閣僚会議に次ぐ議決機関)。本来は、香港閣僚会議に向けて貿易自由化を進める「第一次案」を決める場になるはずでした。ところが、会議は「第一次案の策定を断念する」というスパチャイ事務局長の報告を了承しただけで終わりました。
スパチャイ氏は「香港閣僚会議までの道のりはより険しくなった」と認めましたが、一方で、香港での合意が「実現不可能ではない」と強がってみせ、日本の外務省筋も「十一月には案がまとまる」という見通しを示しています。しかし、実はカンクン閣僚会議のときにも、案が示されたのは会議の二週間前。そして閣僚会議は決裂しました。
WTOを食糧と農業から追い出す
こういう混迷に対し、ビア・カンペシーナをはじめ世界中のNGOは「危機に瀕(ひん)しているWTO――民衆の食糧主権を守るため、われわれはWTOに代わる計画を提案する」という声明を出しました。この声明には農民連も賛成し署名しました。
声明は「現段階で交渉における枠組み案が決まれば、農産物の貿易わい曲やダンピングなどを承認し、企業の力が世界の民衆、特に発展途上国の力を超えたと勝利宣言するものになってしまうだろう」と批判。「WTOは食糧については民衆自身が決定するという主権に対するアンチテーゼである。食糧と農業のいずれにもWTOは必要ない。世界中で食糧と雇用、生活面で苦しんでいる都市と地方の貧しい人々の権利を保証し、守るため、WTOを食糧と農業から追い出さなければならない」と強調しています。
さらに、「食糧主権を守るためにどの国も国内支持を行う権利がある。しかし、アメリカとEUは、農業協定……を悪用してダンピングを行い、輸出から得られる利益だけを求めている」と批判し、「国内の需要に応え、食糧生産を守り、発展させていくことは基本的な権利である。食糧を『輸出する権利』はない」と指摘したうえで、「生産コストを下回る価格での輸出に対するすべての公的支援の禁止」を求めています。
また、ミニマム・アクセスについても「ミニマム・アクセスの義務およびその他の市場アクセスに関する義務を規定した条項は廃止されなければならない」と、明確に廃止を要求しています。
運動を前進させる方向示すもの
これらは、支配勢力のグローバルな攻勢が激化するなかで、「南」と「北」の農民組織やNGOが共同して、これに対抗するグローバルな運動を着実に前進させる方向を示したものといっていいでしょう。
香港は、こういう世界の民衆の運動と支配勢力が真っ向からぶつかる場であり、これほどおもしろい情勢はめったにありません。すべての都道府県から香港に代表を送り、世界と連帯して農業と食糧を守りましょう。
(新聞「農民」2005.8.15付)
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