介護保険 改悪に農家からも怒り
介護の現場から 千葉・栗源町
介護保険が六月に改悪されました。特別養護老人ホーム(特養)など施設利用者から居住費、食費を徴収し、在宅介護の人にも負担が押しつけられる内容。さらに軽度者はサービスから排除されます。高齢者を介護する農家からも改悪に怒りの声が上がっています。
苦しい農業経営
いまでも大変なのにこれ以上負担増たまらない
「農家の経営が大変なのに、これ以上の負担増は絶対に許せない」と怒るのは、千葉県栗源(くりもと)町で、サツマイモ、ナシなどを栽培している佐藤好文さん(57)、直子さん(52)夫妻。
好文さんの母、たいさん(85)は一昨年の一月、脳内出血で倒れ、入院。その前後から、物忘れがひどくなり、言語障害が起きるなど、痴ほうが進んでいました。昨年四月にいったん、家に連れて帰り、週一回のデイサービスや、月十二日のショートステイを利用しながら在宅で介護。月約六万円から七万円かかりました。
今度の改悪では、食事代の負担増によって、デイサービスの回数を減らさざるをえなくなり、ショートステイも十日の利用ならば、入所者の一カ月の居住費、食費の三分の一を負担しなければなりません。
「昔から農家は、親を施設に預けたがらない風潮がある。しかし、最近は、世話が大変で施設に預ける農家も増えています」。こう語る好文さんの家でも、たいさんを在宅介護している間、直子さんは、たいさんのもとを片時も離れることができず、農作業はほとんどできませんでした。
たいさんが脳こうそくを起こし、寝たきりになったのは昨年八月。再び、病院の介護病棟に入った今、月に十万円以上の入院費・療養費がかかっています。相次ぐ医療改悪で、医療費も高騰。高齢者に重くのしかかっています。佐藤さん夫妻の周りには、施設に預けても、負担が重く、困っている人が多くいます。
「原油高で、農業資材も高くなっている。農家の売り上げそのものも下がり、入院費を払い続けるのは大変。農業経営がよくなる見込みがないなかで、施設の居住費、食費を取られたら、やっていけません。今より負担を重くしないで」と直子さんの思いは切実です。
今回の改悪でさらに、「介護予防」の名で、介護サービスを制限し、症状の軽い人を介護から排除することになります。
国の負担押しつけにたいして、利用者の負担を少しでも減らそうと、介護保険料・利用料の減免を実施する自治体も広がっています。町議も務める好文さんも、議会で、介護保険利用者の負担を少しでも減らそうと、介護保険料、利用料の減免を求めてきました。
栗源町は、来年三月に周辺一市二町と合併。「合併で、福祉施策が後退してしまうのではと、町民は心配しています。合併後も、今の福祉水準が後退しないよう求め、市民の負担軽減に力を尽くしたい」。好文さんの決意です。
(新聞「農民」2005.7.18付)
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