豚肉輸入 後を絶たない脱税事件
豚肉の差額関税を悪用した脱税事件が後を絶ちません。豚肉の需要は、BSEや鳥インフルエンザの影響で急増。国内産に匹敵する年間八十六万トン(二〇〇四年度)を輸入しています。事件の背景と問題点を考えました。
差額関税制度を悪用 手口も悪質・巧妙化国産と同水準の価格になるよう差額関税制度とは、安い豚肉を輸入する際に、価格が国産と同じ水準(基準輸入価格)になるまで、その差額を関税として支払わせるもの。一九七一年、輸入自由化されたとき、安い輸入豚肉が大量に入ってきて、国産豚肉が値崩れしないように設けられました。つまり、基準輸入価格(枝肉ベース一キロ五四六・五三円)を設定し、これより安い価格で買い付けたものには、基準輸入価格と同額になるまで、関税をかけます。一方、高い価格で輸入されたものは、一律に定率関税(四・三%)を適用します。脱税業者は、このしくみを悪用し、安価な豚肉を基準輸入価格に近く、実際より高い価格で購入したように見せかけ、虚偽の価格を税関に申告します。たとえば、外国で一キロ四百円で購入した豚肉を五百円で購入したと偽って申告すれば、関税は一キロ四六・五三円で済み、本来かかるべき関税百円分を申告しなかったことになり、百円のもうけ(脱税)になります。
明るみに出たのは“氷山の一角”財務省は、税関が一九九九年から二〇〇四年までに告発した件数が五件(九九年一件、〇三年二件、〇四年二件)、摘発された企業は七社で、脱税額は七億四千万円であることを明らかにしました。今年に入って二件の巨額脱税事件が発覚。大手食肉卸「フジチク」グループが、制度を悪用して六十二億八千万円を脱税した疑いで会長が起訴されました。さらに、大手食肉加工メーカー「伊藤ハム」など四社と同社員が約九億四千万円脱税の疑いで東京税関から告発されました。過去にさかのぼれば数千億円といわれる脱税です。 さらに日本共産党の高橋千鶴子衆院議員に「輸入冷凍豚肉の八割以上が脱税がらみ」だという情報が寄せられ、税関が告発した件数は「氷山の一角」とみられます。 財務省は、高橋議員の求めに応じて、差額関税と四・三%が適用された通関数量・金額の統計を示しました。四・三%適用数量は〇二年度八三・三七%、〇三年度七九・八〇%、〇四年度七九・九九%となっています。
発覚を防ぐため転売に転売重ね脱税の手口も「悪質巧妙化」(財務省)しています。たとえば、輸入業者が海外の輸出業者と結託して、基準価格の前後一、二円の価格で申請。すぐに安値で売ると脱税が発覚するため、実体のない会社での転売を繰り返し、税関が追跡できないようにしていました。とくに輸入豚肉で一番もうけているのは、裏ポークといわれる脱税豚肉を安く仕入れ、ハムやソーセージに加工する大手ハムメーカー。国産豚のハム、ソーセージ加工会社「湘南ぴゅあ」(神奈川県平塚市)の音成洋司社長は「加工品は価格競争にさらされている。コストを下げて、利益率を上げるために、加工品に安い輸入肉を多く使うことになる。こうして大企業がもうかるしくみになっている」と指摘します。 日本ハムや伊藤ハムの会長が歴代理事長を務めてきた日本ハム・ソーセージ工業協同組合は、「複雑なために悪用されやすい」と差額関税制度の廃止を求めています。その一方で、同制度を悪用して、脱税を繰り返してきた大手ハムメーカー。制度に問題があるのではなく、企業体質、つまり、制度や法令をきちんと守る(コンプライアンス)姿勢があるかどうかです。
脱税しながら制度廃止迫る大手ハムメーカー脱税を摘発する税関の現場は…手口が悪質巧妙化するなかで、脱税を摘発する税関の現場はどうなっているのか。財務省は今後の対策として、通関後の事後調査の適正・的確な実施、悪質業者に新たに課税する重加算税導入などをあげましたが、「肝心なのは、水際の申告時にきちんとした対応ができるかどうか」だと、全税関労働組合の宮応勝幸副委員長は指摘します。 月約三千件もの申告がある輸入豚肉。現状では、自己申告制で、一定の書類があればよく、コピーも許されるなど、審査が形式的になっています。税関業務の増員が求められるものの、テロ対策などに人を増やす一方で、水際取り締まり強化の増員はわずかです。 さらに昨年の関税法改正により、申告時の調査よりも、輸入後の事後調査に重点を移す指導が行われています。「書類に頼る事後調査では、巧妙化する脱税の実態には迫れません」と宮応さんは強調します。 「低価格の輸入豚肉が入ると価格が暴落する。再生産に見合う価格にならない」。こう指摘するのは、平塚市で養豚を営む「ぴゅあポーク」の安西肇社長(畜産農民全国協議会事務局長)。「差額関税制度がなければ、一段と安価な外国産が流入し、畜産農家は大打撃を受ける」とのべます。
安くおいしい豚肉 安定供給を
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米屋さんと生産者の交流をメーンに、各産地からは生育状況や作柄、 栽培の特徴なども報告します。
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[2005年7月]
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