「農民」記事データベース20050711-691-08

インド農業最大の危機

〈投稿〉食料工場に変わる(下)

NGO活動家 デビンダ・シャルマ


貧民を土地から引き離す

 不毛な土地に変えてしまった

 米だけではない。トウモロコシ、綿花、ヒエ、野菜など、乾燥地帯に推奨されている混合種は、すべて大量の水を必要とする。加えて、農学者は化学肥料を必要としていると訴え、農民を誤った方向に導いてきた。水不足と化学物質という有害な組み合わせは、乾燥した土地をやせさせただけでなく、不毛な土地に変えてしまった。しかし、“これでは不十分だ”といわんばかりに、綿花では、より多くの水を必要とする遺伝子組み換えのBt綿花を、種子産業の利益のために推し進めた。

 天然資源が枯渇し、飢餓が村人を自ら命を絶つまで追い込んだとき、政府は、インド農業を“食料工場”に変え、貧民を土地から引き離すことに熱心である。その偏向した政策を推すインド合同商工会議所は、借地規則を変え、灌漑(かんがい)の運営を民間にゆだね、貿易障壁を取り壊せと要求する。さらにイギリスの農業コンサルタント会社マッキンゼーの協力を得たインド工業連盟は、工場式農業の可能性を強調する。

 農産物の流通と輸入で利益うる

 彼らは、インドの食品産業が二〇〇五年に五十六兆ルピーに急成長することを視野に入れ、農産物の流通と輸入で利益を得ようとしている。インド工業連盟は小麦粉や豆類の包装を始め、質の高い商品とごまかすためにブランド名をあてがう。

 インド工業連盟と合同商工会議所は、農業への補助金に反対しているが、伝統的で持続可能な農法を企業中心の農業に変える政府の巨額投資は何も問題ないと主張する。しかし、政府が企業に与えている巨大な社会的生産基盤の支援や財政的な補助のほんの一部を農業に振り向ければ、インド農業は急激に変わり、健全なものになる。

 農業を経済面で持続的なものに改善するには、飢餓をなくし、貧困や失業を減らすことが最も効果を発揮するだろう。しかし、過去数十年間、農業の成長は資源開発システムによって邪魔されてきた。その結果、インドの農村は、世界で最も大きい貧民層を抱えている。統計的に調査されたわけではないが、インドの農村の生活は毎年貧しくなっている。

 地域に合わせた農業に関心なく

 現代的な発展は、農業中心の経済から工業中心の経済へと転換をねらう勢力によって推進されてきた。彼らは、各地域に合わせた開発や貧困、農業、食料には特別な関心がない。政府も適切な援助の政策をもたず、農民の自殺を止めることができない。

 近未来はより悪い。WTOに従って、政府はますます貿易障壁を取り払い始めている。食用油でみると、政府は関税を減らし続け、大量な輸入を許し、国内の年間消費量の六三%を輸入油が占めるようになった。油糧種子を生産してきた何百万の農民は、生産過剰の責任を押し付けられる。すでに「青の革命」は、企業に水資源の占有を許し、「黄の革命」は目標が定まらず色を失った。いますべての農民が、「緑の革命」の“成果”に警戒を募らせている。

(おわり)

(新聞「農民」2005.7.11付)
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2005年7月

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