「農民」記事データベース20050704-690-12

旬の味


 南国鹿児島の「旬の味」はタケノコといいたい。幼少のころから遊び道具として竹ゴマ、竹とんぼ、竹馬などに親しみ、食用としてもみそ汁や煮しめにと、生活のなかに溶け込んでいる▼当地では、三月の孟宗(もうそう)竹からはじまり、古参(こさん)竹(「裏代は釣りざお、中代はさお竹、基代は尺八」と民謡で知られる竹)、唐(から)竹(主として竹細工用)、大名竹の順に六月ころまで続く。タケノコは十分にゆでることがコツで、酢みそをつけて刺身で食べる味は天下一品だ▼四月末から五月にかけて古参竹の子取りに行く。すると、おいしそうなタケノコの頭部をウサギが食っているのに出くわす。一瞬もぎ取るのをためらうのは、ウサギのエサを人間が奪っていることに罪悪感を感じるからだ▼戦後、杉やヒノキなどの針葉樹だけが植林され、台風などの被害を受けた自然のなかで、ウサギなどの生態系もおびやかされている。そう思うとやりきれない。人間も野生動物も共存できる環境保全の大切さを痛感する。

(勲)

(新聞「農民」2005.7.4付)
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2005年7月

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