ビア・カンペシーナ地域会議で発表された 農民連の見解文書私たちは侵略戦争の美化と「不戦の誓い」の破棄を許さない〈大 要〉
東ティモールで開かれたビア・カンペシーナ東南・東アジア地域会議で、農民連が表明した「私たちは侵略戦争の美化と『不戦の誓い』の破棄を許さない」を紹介します。
日本軍国主義がアジア・太平洋地域の国々を侵略し、二千万をはるかに超える死者を含む惨害をもたらした第二次世界戦争が終結してから六十周年のいま、求められているのは、侵略戦争の責任をきっぱり認め、歴史認識をアジアと世界の人々と共有していくことであり、日本を二度と戦争を起こさない平和で民主的な国にすることです。しかし、いま日本の小泉政権のもとで進んでいるのは、これに逆行する事態です。
「謝罪をすべて白紙化する行為」が繰り返されている第一に、小泉首相は就任以来、アジア、とくに韓国と中国の強い批判を無視して靖国神社への参拝を繰り返してきました。靖国神社は、あの侵略戦争の直接の下手人である戦犯たちを祭った神社です。かりにドイツにヒトラーを祭った靖国神社のようなものが存在して、ドイツ首相がそれに参拝したとすれば、ヨーロッパ諸国と世界が、どう反応するかを考えてみれば、日本国首相の靖国参拝が、近隣アジアにとってどのような挑発、侮辱なのかは一目瞭(りょう)然であると言わなければなりません。第二に、日本の若い世代に侵略の歴史の真実を直視させるどころか、あの戦争を日本の「防衛戦争」であり「アジア解放のための戦争」だと思い込ませる歴史教科書が二〇〇一年に続いて、今年も政府の検定を通ったことです。 日本の政権与党である自由民主党は、こういう危険な歴史教科書を教育の現場で採用させるために国会議員と地方議会議員が一体となって活動することを党の運動方針にかかげています。日本のNGO、民衆組織(PO)はこれに反対してたたかい、この歴史教科書を実際に使っている学校は全体の0・1%にも満たない結果になっています。私たちはこれをゼロにしなければなりません。
過去に目を閉ざす者は、現在にも盲目になる第二次世界戦争後の世界秩序は、日本・ドイツ・イタリアの侵略戦争を世界が断罪した基礎の上に成り立っています。六十年前に調印された国連憲章は「侵略戦争の再現を許さない」という基礎の上に作られたものです。もしも日本が、あの戦争を“正しい戦争”だったと歴史を改ざんし、それが日本の主流になったとしたら、日本は今日の世界秩序を根本から否定する国として、アジアでも世界でも相手にされなくなるでしょう。私たちは、こういう認識をもって行動することを政府に強く求めています。日本と同じく第二次世界戦争の侵略国であるドイツのワイツゼッカー元大統領は、一九八五年に次のような歴史的な演説を行いました。 「今日の人口の大部分はあの当時子どもだったか、まだ生まれてもいませんでした。……しかしながら先人は彼らに容易ならざる遺産を残したのです。罪の有無、老幼いずれを問わず、われわれ全員が過去を引き受けねばなりません。……過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となります。非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、またそうした危険に陥りやすいのです」 ドイツは、こうして、戦後、ナチス・ドイツの犯罪を徹底的に批判し、現在も過去に立ち向かうことで、ヨーロッパで信頼をかちえています。私たち日本国民もまた「過去を引き受け」なければなりません。そうしてこそ、日本とアジア諸国は、ともに平和な未来をめざす関係をつくりあげることができるでしょう。
私たちは 「不戦の誓い」 の破棄を許さないワイツゼッカー元大統領の指摘は、そっくりそのまま、現在の日本の政治状況にあてはまります。日本は、侵略戦争の痛苦の反省のうえに「政府の行為によって再び戦争の惨禍」を起こさないことを憲法で世界に誓約しました。しかし戦後六十年のいま、日本では、憲法を改悪し、アメリカの同盟国として、海外で戦争をやれる日本になることをめざす動きとこれを阻止する運動が正面から対峙(じ)しています。いま、日本では憲法改悪に反対する運動がかつてない規模で盛り上がりつつあります。その中心は戦争放棄条項である日本国憲法九条を守れという一点です。農民連が構成団体の一つになって四月に発足した「農林水産九条の会」をはじめ、国民のさまざまな階層のなかに草の根のたたかいが広がり、「会」の数は千八百を超えています。 日本の農民運動の先達たちは、文字通り命がけで侵略戦争に反対し、農地解放を求めてたたかってきました。私たちは、このたたかいを引き継ぎ、次のことを実現するためにたたかう決意を新たにしています。
*小泉政権は、靖国神社参拝や歴史をゆがめた教科書の押しつけなど、日本軍国主義による侵略と植民地化の美化・免罪につながる一切の行為と政策を中止せよ。 (新聞「農民」2005.6.20付)
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[2005年6月]
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