GMナタネ 輸入港近くで続々自生遺伝子汚染 国内に広がる食品分析センターの調査 5地点で42%も検出
食用油や飼料向けに輸入されている遺伝子組み換え(GM)ナタネが、運搬作業中にこぼれ落ち、港周辺での自生が全国各地で広がっていることが、農民連食品分析センターの調査で明らかになりました。農水省や市民団体などの調査によっても、輸入港近辺で生育が確認されているGMナタネ。自生種が世代交代を繰り返すうちに非GMの国産ナタネなどと交配し、汚染を広げる危険性が指摘されています。
生態系への影響が重大 国産種との交雑が心配日本でナタネの自給率はたったの〇・〇五%。二〇〇四年には、二百三十一万トン輸入され、カナダからが七三%を占めています。カナダのGM作付割合が七割であることから、日本の食卓は約五割がGMナタネとなっています。食品分析センターは、農民連の依頼を受け、今年三月十二日から五月四日まで、輸入ナタネの陸揚げ実績のある茨城県鹿島港、千葉県千葉港、愛知県名古屋港、三重県四日市港、兵庫県神戸港の五地点で、道路脇などに生えているナタネや西洋カラシナを調査。ただし、神戸港では、ナタネと判断できる植物を発見できず、サンプルを得ることができませんでした。 試験対象としたサンプル数は百四十八。そのうち六十二検体、約四二%から組み換え遺伝子が見つかりました。GMナタネにはいくつかのタイプがありますが、その多くは、除草剤を散布しても枯れにくいような耐性遺伝子を組み込んでいます。今回、組み換え遺伝子が見つかった六十二検体のうちグリホサート耐性遺伝子を持つタイプが四十七検体、グルホシネート耐性遺伝子を持つタイプが十五検体でした。(注) △港の特徴▽ 鹿島港 環境省の調査で検出事例がありますが、今回はGMナタネを検出できませんでした。サンプリング地点が少なかったことのほか、すでにいくつかの調査が行われていて、管理や抜き取りによって数が少なくなっていたことが考えられます。 千葉港 とくにシーガル広場手前地点から採取した検体の約七〇%がGMナタネでした。シーガル広場手前には、五センチメートルから三十センチメートルに成長したナタネが集中的に自生していました。この地点のすぐ先は岸壁となっており、陸揚げ時にこぼれ落ちたナタネだと推測されます。(写真〈写真はありません〉) 四日市港 ふ頭から倉庫に飼料などを直接運んでいるコンベアの下にはナタネが生えており、採取三サンプルのうち二サンプルがGMナタネでした。コンベアはトンネル式に覆(おお)いがされているものの、そのすき間からこぼれ落ち、自生していると考えられます。 四日市港からは頻繁にトラックでナタネが運搬されており、運搬中に落ちた可能性があります。 鈴鹿大橋と土手からGMナタネが検出されました。鈴鹿大橋下の川原は広い西洋カラシナの群生地となっていますが、検出地点と群生地はわずかな距離しかなく、GMナタネが西洋カラシナの群生地に入る可能性が高い状況にありました。
(注)
自給率向上が何よりも大事「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」の塚平広志さん 今回の調査で、自生ナタネの四二%近くからGMナタネが検出されたことは、これまでの市民団体の調査に加え、汚染の広がりの深刻さを示しています。日本では、GMナタネの作付けは、行っていないのに輸入するだけで、GM種が自生し、花粉をまき散らして、世代交代を繰り返し、野生種や在来ナタネに伝播していくところに遺伝子汚染の恐ろしさがあります。 このまま放置すると、有機農作物が作れなくなったり、近縁の菜花、ハクサイ、キャベツなどの野菜にも汚染が広がる危険性もあります。 こぼれ落ちGMナタネを調査し、政府や自治体、関係企業に抜き取りなど汚染防止を要求していく必要もあります。 「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」では、今春以来、消費者団体、生協などと協力し、全国調査をおこなっており、七月九日には東京・明治大学で、GMナタネ全国自生調査報告集会を開きます。
農民連食品分析センターの八田純人さん GMナタネの自生が把握されましたが、こぼれ種による発芽なのか、すでに繁殖中のものなのか、今後繁殖地域が広がる可能性があるのかなど、継続的な調査を行い、情報公開を十分にしていく必要があります。港だけでなく、より広い範囲での調査が求められます。 今回、各市民グループによる調査のための抜き取り作業が行われ、サンプルが少ない地域も含まれていたにもかかわらず、GMナタネを採取できたことは、一度環境中に入った植物を効率よく除くことは、大変困難だということだと思います。危機感を持って受け止め、拡散防止対策を徹底する必要があります。
ナタネを栽培している茨城県結城市の北嶋誠さん 今回の結果は、何でも輸入に頼る、日本農業の現実がよく現れていると思います。国内でもGMに頼らざるをえない現状が作られつつあり、放置しておくと、遺伝子汚染で取り返しのつかないことになります。GMナタネの輸入を阻止することは食糧主権を守ることにつながりますし、何よりも食料自給率を高めることが大事です。 遺伝子組み換えを使わない大豆トラスト運動によって、大豆の栽培機会が増えています。私も苦労しながら、ナタネを栽培していますが、作り続けることによって、技術や機械の開発につながりますし、農地も維持できるのです。 農業つぶしを許さないためにも、これからもナタネを作り続け、自給率向上に貢献していきたいと思います。
(新聞「農民」2005.6.20付)
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[2005年6月]
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