インド農業最大の危機〈投稿〉農民の自殺(上)NGO活動家 デビンダ・シャルマ昨年十一月に来日、農民連専従者研修会で「WTOは世界の農業と食糧に何をもたらしたのか」と題して講演したインドのNGO活動家、デビンダ・シャルマさんから投稿が届きました。「農民の自殺―インド農業最大の危機」と題する論説を紹介します。
わずかな借金で死を選ぶ4人に1人が…インド・マハラシュトラ州のヴィドゥラバ地方に住む二百四十三人の農民のうち六十五人が自殺を図った。わずか八千ルピー(日本円で約二万円)という取るに足らない借金によって。「緑の革命」がもたらした惨状から逃れるため、三十六歳の農民は死を選んだ。その妻、ミーナさんは、二度とものを言わない夫の葬式をあげる金がない。カルナタカ州では四百人以上の農民が自殺している。この話で悲しいのは、自殺者のほとんどが四十五歳以下の若い年代だということである。 インド農業の先頭に立っているパンジャブ州やハルヤナ州でも、状況は改善されない。“死のダンス”の勢いが衰えず続くなか、政策担当者や農学者は、第二の「緑の革命」の準備で忙しい。警告音はもう長いこと鳴り続けているのに。 海外からの投資や輸出を重視した農産物の取引によって、このような状況が招かれた。農薬や化学肥料を多用し、混合種や遺伝子組み換え品種など水を大量に必要とする作物の栽培が推奨されたため、地下水は干からび、土地はひどくやせてしまった。
救済計画が失敗農民を救済するはずだった様々な計画は失敗に終わった。国立土壌調査・土地利用計画機関は、国内の約一億四千二百万ヘクタールの農地のうち、一億二千万ヘクタールがすでに荒廃していると公表している。「緑の革命」で新たに五千八百万ヘクタールの農地が生まれ、食料の増産を可能にし、国を守ることができるとうたわれたが、実際はその二倍の農地が放棄されて荒廃し、生態系の崩壊が進んだ。なぜ農民の自殺がこんなに多いのか、説明はない。生存に必要な最低限の保障がなくなるという根本的な問題を取り上げることもない。水不足の乾燥地帯に、大量の水を必要とする品種を持ち込んでいるという問題は、わざと避けられている。 (つづく)
(新聞「農民」2005.6.13付)
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[2005年6月]
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