ふるさとネット通じて
栽培も販路ももっと大きく
風かおる薩摩路 鹿児島から旬のたより
いぶすき農民組合
農民連ふるさとネットワークを通じて、生産と販路を広げる動きが注目を集めています。鹿児島県薩摩半島南部の、いぶすき農民組合は、スナップエンドウ(スナップ)の栽培と販路拡大に取り組むなかで、組合活動を活性化させています。
スナップならうまくいくぞ
業者が期待 展望と確信もてた
いいものをもっと
「次年度のスナップを作ってくれる農家組合員を探しています」と呼びかけるチラシを配布して開いた四月二日の集まり。十三人が参加し、うち四人が新しい農家です。
今年のスナップの作付けについて「安定した出荷のためには、量の確保が必要」「美しいものを作るのに農薬は必要か」など、話は盛り上がりました。参加者全員が「みんなで集まり、持っている技術を出し合い、いいものを作っていきたい」と、認識を分かち合いました。
昨年五月に結成された、いぶすき農民組合は、指宿(いぶすき)市と山川(やまがわ)、開聞(かいもん)両町の農民組織。一市二町は来年、合併して指宿市となる予定です。
組合発足を呼びかけ、発会の先頭に立った吉村重則会長(山川町)は「農民連ふるさと産直九州ネットワークに参加して、スナップに生協や市場から大きな期待が寄せられていることがわかった」と振り返ります。昨年、九州ネットに、ある青果会社から「生協だけでなく、スーパーでも農民連の野菜を供給したい」との申し出がありました。九州ネットが、「まずできるところから始めよう」と注目したのが、販路の開拓に意欲的に取り組んでいた山川町のスナップでした。
農業に恵まれた指宿地方。火山活動により、各所に温泉がわき、地熱が高いのが特徴。暖流の影響で年間気温が一八・五度と高く、あらゆる作物栽培に適しています。
農家からは「安定した価格で安定した売り先が欲しい」という要望が強く、吉村さんは「スナップだったら、うまくいくし、仲間も増やせる」と産直に注目しました。「仲間と力を合わせて、さらに生産と販路を広げたい」と考え、仲間作りに奔走。こうして同組合は、ふるさとネットへの展望と確信を広げるなかで誕生したのです。
吉村さんの二男、了一さん(25)は、鹿児島市内のフットサルチームに所属。「青年の思いはいろいろです。青年部を作って、みんなで話し合う機会ができれば」と、仲間づくりに意欲的です。
吉村さんは、かつてホームレスだった人たちを「社会復帰も考えて」自分の畑で農作業に従事させています。元サラリーマンの高群勝彦さん(38)は「農作業は大変ですが、植物の名前やトラクターの乗り方を覚えることにやりがいを感じます」と目を輝かせます。
新しい仲間ふやし
「吉村さんの人柄と地域に根ざした取り組みにひかれました」と話すのは、二月から事務局員を務める小櫻千明さん(44)。副会長の吉元征男さん(55)=青果会社経営=も「自分の会社を放り出してでも、ついていく」と、厚い信頼を寄せています。
新事務所は、廃屋同然だった病院を改装。「山の学校」という意味の「やまん学校」という愛称をつけました。事務局員の配置、事務所の開設と、準備が整ったなかで、開かれた二月十八日の総会。八家族二十二人が参加し、スナップやレタス栽培を大いに広げ、販路拡大についても熱のこもった討議が行われました。
吉村会長は「あらゆる作物ができる指宿の特徴を生かして、販路を広げたい。産直に取り組むなかで、もの作りに励む新しい仲間を増やします」と決意しています。
(新聞「農民」2005.5.2付)
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