ふるさとネット・米検査員交流会信頼される農民連の米検査を求められる公正・的確さ
「公正・的確で、信頼される米検査を」――農民連ふるさとネットワークは四月七日、米の等級格付けなどを行う農産物検査員の交流会を都内で開きました。(写真〈写真はありません〉)
準産直米 米屋さんに安心されてこそ米検査制度は、二〇〇〇年の農産物検査法の改正で、国による検査から民間検査へ順次移行し、今年度から完全民営化。これまで地方農政事務所などが行ってきた米検査は、都道府県ごとに登録された民間検査機関が担うことになります。一方、ふるさとネットは、“作る農家の顔が見えるお米を消費者、米屋さんに”と、準産直米のとりくみを進め、扱い量を年々増やしてきました。この準産直米を、米屋さんなどに安心して扱ってもらうためにも、公正・的確な検査が必要です。
約50人の会員が検査員となってまた、検査を受けなければ、「コシヒカリ」「あきたこまち」といった品種も表示することができません。ふるさとネットは、検査員の養成と検査機関の立ち上げを全国の産地に呼びかけ、現在、二十道府県で約五十人の検査員が業務に携わっています。交流会では、大阪農業振興協会の佐保庚生さんを講師に、検査を行ううえでの心構えや留意点などを学習。参加者は、ぶつかっている悩みなども率直に出し合い、「信頼される検査員になろう」と再確認しました。 佐保さんは、農政事務所で検査業務に長く携わり、検査技術を指導する立場にもあった大ベテラン。「米は、市場でセリ取引される野菜などとは違って、現物を見ずに取引される作物。だからこそ、『公正・的確』な検査が求められる」と言います。 米検査制度が生まれたのは、年貢米が廃止され、市場流通が始まった明治初期。初めは民営検査で、のちに府県営検査になり、一九四二年に国営検査がスタートしました。今回の民営化はそれ以来です。
技術の研さんを積み責任をもち「肉眼でやる以上、米検査に個人差は避け難い。それをできるだけ減らすために、国の責任で全国的な格付け程度の統一をはかる必要がある」と佐保さん。同時に、「民営化を批判するだけでなく、『農民連の検査は安心だ』と言われるような、信頼される検査体制を確立していかなければならない」と述べました。そのうえで、検査にあたって大事な点として、(1)その年の生育・気象条件による品質の特徴を事前に把握する(2)検査程度統一のための検討会の開催(3)「検査手順」を基本にした検査の実施(4)検査現場での疑問品の扱い―などをあげて詳述。「検査は、甘くも厳しくもなく、適正でなければならない。そのために、年間を通じて検査技術の研さんを積み、検査機関は検査員まかせにしないで責任を持つこと」を提起しました。 討論では、参加者から「検査を受ける農家と検査員の対話や信頼関係の構築が大事」といった声があがるとともに、実際に寄せられたクレームをもとに、参加者同士、検査方法の改善を検討する場面も。また、山形・庄内では検査機関が集まって独自に協議会をつくり、農政事務所に依頼して鑑定研修をやっていることなどが紹介され、こうした技術向上のとりくみを全国に普及していくことになりました。
自前の検査機関持つのが不可欠交流会で「自前の検査機関を持つことは、今日の情勢で不可欠」と強調した福島・浜通り農業を守る会の中井信也事務局長。農業を守る会は、検査が民間になる前から、公的検査と並行して独自に品質判定を行っています。それは、「検査の場が、良い米を作るための努力を生産者と確認しあう機会だから」。同会は、肥料や農薬の設計を行い、年に数回、集団で田んぼの状況を見て回るなど、組織として良いお米を作るとりくみを進めています。 さらに中井さんはこう続けます。「『米改革』で米流通が完全自由化され、民間の検査機関が、一部の大手流通業者の買いたたきの道具にされる危険がある。自ら米の品質を把握し、アピールしていかなければならない」。 実際に、米卸の団体が「優良」検査員とその機関をリスト化する動きがあります。この場合、誰にとっての「優良」か、が大問題。一等のお米を二等に格付けされれば、農家は買いたたかれることになるからです。 「『公正・的確』な検査、検査技術の向上は、農家と消費者、流通業者に共通する要求。国にもその責任を果たさせる必要がある」と、中井さんは指摘しました。
超早場米 田植え鹿児島鹿児島・南さつまでは、三月末から四月初めにかけて、超早場米の田植えが真っ盛り(写真〈写真はありません〉)。七月後半には稲刈りが始まります。私の住む大浦町の稲作農家は二百六十戸。このうち認定農家は十四戸で、それ以外は平均五十アールの中小農家。今年は、このうち一割の農家を組織して、産直・準産直に出したいと思っています。 私たちのお米は、山の清水で作った「大浦の山麓米」。自然が育んだ、安全でおいしいお米です。 もう一つの目標は、集落の共同体づくりと農民連の組織拡大。「食料を外国に依存して、農村政策を放棄した国にはもう頼ってられん。おれたちが自立した村づくりをやらんと」と訴えています。 (鹿児島県農民連 下屋一美、写真=牧信利)
(新聞「農民」2005.4.25付)
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[2005年4月]
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