改悪農協法が狙うもの(3)
農協が民間保険会社の代理店に今回の農協法改定とそれに伴う各組合の定款改正のもう一つの柱は「共済事業の改善」です。定款の改正案は表現こそ、事業の健全性確保、契約者保護、機動的運営確保などと無難になっていますが、その内容はこれまでの共済事業のあり方と質的変化が見られます。
行政介入の増加で自主性が後退健全性の確保では、信用事業に加えて共済事業でも、事業を行うために必要な最低出資金額が省令で定められることになり、出資総額・利益準備金その他の支払能力の充実も行政命令に従わなければならなくなりました。契約者への割り戻しも省令で定める基準に従わなければなりません。共済責任準備金は、区分経理の義務と他目的への利用禁止が行われ、全組合に共済計理人の選任が義務づけられ、資格要件も定められます。信用事業に準じて一定規模以上の組合(貯金・定期積金合計が五十億円以上)では、監事のうち最低一人を、組合と無関係の第三者監事にしなければならなくなります。 この第三者監事の導入によって、本来、非営利・協同組織である農協が、営利組織に転換させられるといった事例が、各地で頻発しています。
共済金額削減も制度化された契約者保護では、すでに訪問販売などで導入ずみのクーリングオフが採用され、契約者は書面で契約の撤回・解除ができることになり、この点では強烈な事業推進に歯止めが期待されます。また重要事項の説明責任や虚偽情報の提供禁止、損害賠償責任もあらたに明記されます。しかし一方では「事業継続が困難となる蓋然(がいぜん)性がある場合、共済金額の削減など契約条件の変更ができる(行政庁の承認を得て、総会で三分の二以上の特別決議が必要)」といった、契約者保護とは逆行する可能性のある条項も含まれています。
協同組合独自の共済が不明確に機動的事業運営で注目されるのは、農協共済だけでなく、株式会社化した共栄火災をはじめ民間保険会社の業務代理・事務代行が可能になったことです。いま各地で提案されている定款改正案には、民間保険会社の社名が列記されており、組合員を驚かせています。共済という表現は、協同組合だけに認められたものであり、文字通り相互扶助を意味する大切な活動です。しかし今回の法改定では共済も保険も境界が不明にされ、ここでも協同組合としての農協の独自性が失われています。 信用事業の「バンク」化、経済事業の「外部化・会社化」に続く、共済事業の「民間保険会社の代理店化」。それは、「米政策改革」と並んで財界主導政治の柱とされた「農協改革」の名による協同組合つぶしの表れと言えます。 (おわり) (H・Y)
(新聞「農民」2005.4.11付)
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[2005年4月]
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