リスク増加は明らか手放しの緩和ではない食品安全委プリオン調査会答申案
食品安全委員会プリオン専門調査会は三月二十八日、BSE全頭検査から二十カ月齢以下を除外しても「リスクは非常に低いレベルの増加にとどまる」との答申案をまとめました。翌日の新聞はいっせいにこれを「全頭検査緩和容認」「アメリカ産牛肉の輸入再開へ一歩前進」などと報道。島村宜伸農相も記者会見で「国内措置見直しの答申が得られるものと承知している」と述べました。 しかし、答申案は同時に、SRM(特定危険部位)除去や飼料規制などの強化を行い、月齢見直しは、「その実効性が確認された後に行うのが、合理的な判断」と指摘。決して手放しで全頭検査の緩和を容認したものではありません。 二十八日の調査会でも、「月齢見直しは時期尚早との意見が多数だったように思う」(甲斐智恵子・東京大学教授)、「二十カ月齢以下を除外すれば、より感度の高い検査方法の開発に支障をきたす恐れがある」(北本哲之・東北大学教授)、「検査技術の向上と月齢見直しはそもそも矛盾」(山内一也・東京大学名誉教授)といった批判的意見が相次ぎました。 また、答申案は、このリスク評価が、日本のBSE汚染度や、日本のとっている対策(飼料規制、と畜場での検査、SRM除去など)をもとに「総合的に評価したもの」であり、今後、諸外国のリスク評価を行う際にも「総合的な評価を行うための多様なデータの存在が必須」と述べています。これは、仮にこの答申案をもとに二十カ月齢以下の検査をやめたとしても、アメリカの二十カ月齢以下の牛の輸入を認めるものではないということを示しています。 さらに、何と言っても答申案が検査月齢の線引きによる「リスクの増加」を明確にしていることが重要です。「二十カ月齢以下の群で陽性例が出る可能性は否定できない」と指摘。「検査を二十一カ月齢以上にすると、これが見逃されるリスクとなる」と述べています。 そもそも食品安全委員会はリスクを科学的に評価する機関であり、政策を決める機関ではありません。低いレベルとはいえリスクの増加は明確なのですから、政府は全頭検査の継続を決めるべきです。
(新聞「農民」2005.4.11付)
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[2005年4月]
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