全頭検査の緩和を容認する食品安全
委員会プリオン専門調査会の答申案
に抗議し、撤回と慎重審議を求める
二〇〇五年三月三十日 農民運動全国連合会会長 佐々木 健三
一、農水省、厚生労働省から全頭検査緩和の諮問をうけた内閣府・食品安全委員会プリオン専門調査会は、三月二十八日、BSE検査から生後二十カ月以下の牛を除外してもBSE感染のリスクは「非常に低いか、もしくは無視することができる」とする答申案をまとめた。答申案は、政府が全頭検査を緩和することを容認し、牛肉の安全・安心を願う多数の国民の声に背を向けたもので、到底受け入れることはできない。
そもそも全頭検査緩和の動きは、BSE発生によって停止しているアメリカ産牛肉輸入の早期再開を求めるアメリカ政府の圧力からはじまった。答申案が、アメリカの圧力や、「全頭検査は世界の非常識」(島村農相)などという政府の不当な介入の影響を受けた感はぬぐいさることができない。
農民連は、答申案の撤回と食品安全委員会においてさらに慎重な審議を続けることを強く求める。
一、同時に答申案は月齢見直しについて、危険部位除去や飼料規制の強化など「一連の対策の実効性が確認された後に行うのが合理的判断である」と述べるとともに「二十一カ月以上を検査対象とした場合、若齢牛での検査成績の評価ができなくなる」との「批判的意見」に留意すべきだと併記している。
これは、全頭検査の緩和によるBSE感染のリスクが存在し、全頭検査継続を求める国民世論を無視できなかったことを示している。この答申案を根拠に政府が全頭検査の緩和を実施するなら、牛肉に対する国民の不安はますます高まらざるをえない。
一、答申案は三月三十一日に開かれる食品安全委員会に提出され、国民からの意見公募を経て政府に最終答申することになる。
未解明の部分が多いBSE問題でもっとも問われていることは、何よりも安全であり、月齢によるリスク判断ではなくBSEを根絶することにある。そのためにあらゆる人々が英知を結集して挑むことである。新聞・テレビなどマスコミを含む各種の世論調査で、国民の圧倒的多数が全頭検査の継続と、万全なBSE対策を望んでいる。食品安全委員会は、こうした多数の国民の声に耳を傾け、慎重に審議すべきである。
政府は、最終答申後にアメリカ産牛肉の輸入再開に向けた「条件」を確定し、食品安全委員会にリスク評価を諮問するとしている。文字通り、ズサンなBSE対策を続けているアメリカの態度と、牛肉の安全性が正面から問われることになる。まさにこれからの運動が重要である。
農民連は、引き続き安全な牛肉を求める国の内外の方々と連携して全頭検査の継続と万全なBSE対策、「BSE対策が未確立なアメリカ産牛肉は輸入するな」の運動に全力をあげるものである。
(新聞「農民」2005.4.11付)
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