「農民」記事データベース20050404-678-11

農業つぶしの歴史的事実を伝えずにすませていいのか


 『怒りの炎―農 星霜と夢』に込めた思い

   農民連顧問  小林 節夫さんに聞く


 農民連顧問(前代表常任委員)の小林節夫さんが著した『怒りの炎―農 星霜と夢』が一月、出版されました。ものを作る農民として、農業つぶしの悪政を厳しく告発し、各地の農民と喜びや怒りをともにしてきた小林さんに、本書に込めた思いを聞きました。


 農民連結成前はたたかえなくて

 農民連ができるまで、日本では農民運動の全国センターが事実上、長期にわたって機能しませんでした。そのために大事な節目節目でたたかえなかったという痛恨の歴史があります。

 お米の消費が減り続けている原因に、学校給食で味覚を変えられたという歴史があります。五四年に制定された学校給食法の施行規則では「完全給食とはパン、ミルク及びおかずである」とされ、ご飯が入ったのはそれから二十年以上経ってからでした。もし、あのときに全国センターがあったら、見過ごさなかっただろうと思うんです。

 戦後の農民運動が政党から独立せず、要求を基礎にした運動や近代的な組織づくりでうまくいかなかったのは、歴史的な制約で仕方のないことです。しかし、それを分析・総括して教訓にすることが、来るべき時代に大事になると思って書きました。

 農民は過保護? とんでもない!

 七〇年代の終わりごろから、日本農業は割高だ、農民は過保護だ、割高を克服できないなら輸入すればいい、といったイデオロギー攻撃が盛んに行われました。しかし、日本よりはるかに大規模なアメリカ農業が、農業所得の四割も補助金に頼っているという事実があるし、農家が過保護だというなら財界のほうがよっぽど過保護です。

 たしかに一ヘクタールばかりの農家が個々にコンバインを持つのは経済学的に見れば過剰投資でしょうが、政府が中小農家は農業をやめろという時に、農家は兼業収入をつぎ込んで機械を購入し、朝夕、土日を使って農業を続けました。それほど農業をやめたくないんです。兼業がなぜ悪いのか。日本には日本のやりようがあると思います。

 いまの政治を変えない限り、こうやったら明日の農業はよくなるなんて見通しはありません。でも、作ることを農民の心に呼びかけることが第一だと思います。国民は国産を望んでいるし、食健連運動がある。消費者と結びついてこそ農民は元気がでます。

 農民の仲間と、ともにした怒り

 この本では、一農民として、一人の農民運動に携わったものとして、この目で見、体験し、確認した具体的な事実やそこから出発したことを中心に書きました。社会党・全日農中央によるコメ輸入自由化受け入れの歴史を書いたのも、この歴史的事実を書いた本が他にないからです。各地の農民の仲間と、悪政に対する怒りをともにしてきたので、タイトルは「怒りの炎」にしました。

 WTO以後を書かなかったのは現在進行中で、書くのは早すぎるし、私が触れる立場にないからです。いつか組織的に農民運動史をつくるうえで、批判の材料になることも含めて幾らかでも役に立てばと思っています。


本の泉社・税込2300円 注文は、電話03(5800)8494(本の泉社)まで

(新聞「農民」2005.4.4付)
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2005年4月

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