「農民」記事データベース20050328-677-01

米国産牛肉問題山場に 食健連が緊急要請行動

禁輸継続vs解禁圧力
せめぎあい

アメリカの圧力に屈するな!!

 アメリカ産牛肉の輸入再開問題が、一気に緊迫の度を増しています。アメリカが経済制裁をちらつかせて再開時期の提示を強く迫り、これに呼応して小泉内閣から輸入再開を受け入れかねない発言が相次ぎ、食品安全委員会にも圧力をかけています。こうしたなか、アメリカのライス国務長官が十八日に来日。国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会(全国食健連)は同日、緊急の要請行動にとりくみ、「全頭検査を継続せよ! 政府はアメリカの圧力に屈するな」の声を響かせました。

関連/3・18ドキュメント


ライス長官 早期再開へ政治決断迫る

 アメリカ産牛肉の輸入再開問題が、一気に緊迫の度を増しています。アメリカが経済制裁をちらつかせて再開時期の提示を強く迫り、これに呼応して小泉内閣から輸入再開を受け入れかねない発言が相次ぎ、食品安全委員会にも圧力をかけています。こうしたなか、アメリカのライス国務長官が十八日に来日。国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会(全国食健連)は同日、緊急の要請行動にとりくみ、「全頭検査を継続せよ! 政府はアメリカの圧力に屈するな」の声を響かせました。

 ライス長官は十九日、町村信孝外相、小泉純一郎首相と相次いで会談。「アメリカの牛肉は安全だ。この問題の早期解決を望んでいる」と強調し、早期再開への政治決断を求めたのに対して、日本側は「日米関係を害することがないように適切な対応をしたい」と述べるにとどめました。

 政府が再開時期の提示に応じなかったことは、食健連をはじめとする国民的な運動の成果です。NHK世論調査では、政治決断よりも安全性を重視すべきとの声が八割を超え、こうした圧倒的な世論が、小泉内閣の手足をしばっています。

 
世論は、全頭検査!
NHK世論調査(15日)
20カ月齢以下の牛の検査除外に「反対」75%、「賛成」16%。
アメリカ産牛肉輸入再開について「安全性を重視するために専門家の議論がまとまるのを待つべきだ」84%
「ニューヨーク・タイムズ」15日付社説 牛肉貿易を再開する「唯一の責任ある道」は牛の検査であり、「必要なら全頭検査も行うべき」、「BSEのまん延につながるようなエサの与え方をきっぱりとやめるべきだ」

 さらに、ライス長官のいう“アメリカ牛肉の安全性”にもますます不信が高まる状況。アメリカのと畜場で食肉を検査する検査官の労働組合は昨年末、牛の月齢判断がいいかげんで、本来食用にしてはならない脳やせき髄などの危険部位 が食品に混入していると告発。三月にはアメリカ会計検査院が、牛のエサにBSEの感染源である肉骨粉が混入する可能性を指摘し、「リスクを実態よりも低く見積もっている」との報告書をまとめました。

 
危ないアメリカ産牛肉
危険部位、混ざる恐れ!
アメリカ食品検査官労組の告発

「SRMと呼ばれるたいへん危険な物質を防ぐ権限が、検査官に与えられていない」「食品加工場では、30カ月齢以上かどうか、正確に識別 していない。したがってその先の工程では、従業員や政府の担当者が、多数の部位 をSRMとして除去しなければならないことを知らず、食品供給に入りこんでいる」
「BSE対策に欠陥」
アメリカ会計検査院が指摘

⇒これまでに検査を受けた飼料製造工場などの企業以外にも、飼料用肉骨粉禁止の対象となる製造業者や飼料運搬業者などが多数ある
⇒検査を受けた業者の19%にあたる約 2800の業者が過去5年以上にわたり再検査を受けていない

 こうしたお粗末な実態を放置したまま、強硬に輸入再開を迫ることに対しては、アメリカ国内でも批判の声が高まっています。「ニューヨーク・タイムズ」が社説で、牛肉貿易を再開する「唯一の責任ある道」は牛の検査であり、「必要なら全頭検査も行うべき」と掲げたのもその表れです。

 同時に、ここにきて重視しなければならないのは、政府が前言をひるがえして、アメリカのリスク分析を食品安全委員会に諮問せず、政治判断で輸入再開にこぎつけようとしていること。「日経」(3月18日付)が「輸入再開の審議には法的根拠はない」「政治判断を下す余地はある」との記事を載せるなど、マスコミもこれに向けた世論づくりを始めています。

 情勢は、「食の安全・安心」を求める国民世論と早期再開をねらう日米両政府のせめぎあい。世論をさらに広げていくことが求められます。


3・18ドキュメント

 全国食健連が十八日に取り組んだ農水・厚労両省への要請行動には、主だったテレビ局が勢ぞろいし、夕方のニュース番組などで報じました。全国から集まった参加者の行動をドキュメントで追うと…。

 歴史を開く一歩に

 午後0時 農水省前。坂口正明事務局長の「歴史を開く大きな一ページにしよう」のあいさつで始まる。各団体の参加者があいさつ、決意表明
 0時40分 農水、外務両省に向かってシュプレヒコール
 1時20分 農水省前で、参加者が一人一人マイクを握り、「ブッシュが来ようが、ライスが来ようがダメなものはダメ」「日本はアメリカの属国ではない」「世界の非常識はあなた(ライス)の方だ」と怒りを込めて訴える
 1時35分 農水省の担当者に一人一人が思いを伝えながら、「私の一言」を書いた請願書を手渡す
 2時00分 厚労省前で要請行動。代表が厚労省担当者に要請書を手渡し、「国民の食の安全を守れ」とシュプレヒコール

 圧倒的多数の声

 3時00分 衆院第二議員会館で「全頭検査継続せよ、アメリカの圧力
に屈するな! 緊急集会」。農民連の佐々木健三会長が「今日の集会には大勢のマスコミが取材するなど注目されている。科学的根拠もなく『安全だから早く輸入しろ』とするアメリカの主張には道理がない。『専門家の議論を待つべきだ』が国民の圧倒的多数の声だ」とあいさつ
 参加者は「輸入再開反対とともに、国産牛肉の自給率を上げていく運動を大きくしよう」「憲法改悪反対の集会などで、アメリカ産牛肉に反対する寸劇を行っている」「全頭検査継続の自治体決議が広がっている」など各地の取り組みを交流
 この間、日本共産党の高橋千鶴子衆院議員が「みなさんの運動が政府を追い込んでいる」(3時15分)、紙智子参院議員が「国民の世論で政府を包囲しよう」(4時10分)と激励

 地域で運動強く

 4時20分 農民連の笹渡義夫事務局長の「地域での運動を強めよう」の呼びかけに大きな拍手で応え、閉会。「日本はアメリカの属国じゃない。国民をばかにするな。今日の集会を力に、周りに呼びかけて、地域での運動を強めたい」と、牛のコスチュームを着て参加した木村弘子さん(53)=東京都世田谷区=

(新聞「農民」2005.3.28付)
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2005年3月

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