「農民」記事データベース20050321-676-02

小泉首相

農産物輸出拡大

「亡国」農政への批判かわす目くらまし


いっそうの市場開放の口実に

日本農業にとってむしろ害悪

 農水省は、農林水産物輸出を現状の二倍、六千億円に増やす目標を決めました。そもそも輸出拡大は、「海外では、日本の農産物が高級品として売れている」と、所信表明で声を張り上げた小泉首相の肝いり。しかしこれは、輸入自由化と価格保障の縮小・廃止で日本農業を存亡の瀬戸際に追いやっている小泉「亡国」農政への批判をかわすだけのものです。

 一個二千円のリンゴ

 輸出拡大が「攻めの農政」だと言いますが、実際に輸出される農産物はごくわずか。〇三年度の輸出額は約三千四百億円ですが、金額が大きいのは水産加工品、真珠、調製飲料、たばこ、小麦粉などの加工品。小麦粉などは原料の大部分を海外から輸入しており、これが日本の農産物の輸出と言えるのか、はなはだ疑問です。

 純粋な農産物となると主なものは、リンゴ(43億円)、ナガイモなど(15億円)、緑茶(15億円)、米(7億円)など。総生産額に占める割合は、リンゴで三・六%、米では〇・〇三%にすぎません。かりにこれが二倍に増えてもたかがしれており、“輸出が日本農業の救世主”のごとき浮かれた発言は、目くらまし以外の何ものでもありません。

 それなのに“輸出に目が向かないのは農民の怠慢だ”といわんばかりなのが小泉流。日本経団連の機関誌で奥田碩会長と対談した小泉首相は「やればできる。大企業は、業績があがる体制をつくりあげた。農業も、輸入阻止というだけでなく、真剣に輸出しようという意欲が出てきた」などと放言しました。

 しかし小泉首相がよく引き合いに出す「中国で一個二千円で売れるリンゴ」は輸出向けに作ったものではなく、家族経営農家が丹精込めたものです。青森・弘前市のリンゴ農家、片山寿伸さんは、昨年六月に開かれた食料・農業・農村政策審議会企画部会のヒアリングで「おじいさん、おばあさんが丁寧に作っているリンゴ園は非常にいいリンゴをとっている。それを集めて中国に出したところ一個八百円で売れた。小さい農家がみんなつぶれていくと、その技術が失われると危ぐしている」と語っていました。

 輸出拡大を声高に叫ぶことは、WTOやアジア諸国とのFTA(自由貿易協定)交渉が、財界の求める鉱工業品輸出を最優先し、国内農業を犠牲にする形で進められているなかで日本に対する市場開放要求の口実にされ、日本農業にとってむしろ害悪です。

 台湾で魚沼コシ

 さらに、「毎日」(04年7月24日)は、日本米の最大の輸出先である台湾で、日本米に対する防衛として魚沼コシヒカリが作付けされていると報じていますが、農産物輸出は農業分野で相手国との新たな緊張関係をもたらします。

 日本の農民がとるべき道は、安全・安心な国産農産物を国民に届けて食料自給率を向上させること、そして「食糧主権」の立場で、先進国のダンピング輸出に苦しめられている途上国の農民と連帯していくことです。

(新聞「農民」2005.3.21付)
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2005年3月

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