財界の“露払い役”「ワタミ」の実態…強まる大企業の農業参入千葉・山武町にみる疑問?!大企業による農業への参入・支配の動きが強まっています。小泉内閣は今国会に、これまで「構造改革特区」に限定していた株式会社一般の農業参入を全国に広げる法案を提出。この動きを後押ししようとしています。
有機農業? 売上3千万円?近隣農家は冷めた目!!大企業による農業への参入・支配の動きが強まっています。小泉内閣は今国会に、これまで「構造改革特区」に限定していた株式会社一般の農業参入を全国に広げる法案を提出。この動きを後押ししようとしています。農地の支配や事業チャンスを狙っている財界。その“露払い役”をかってでているのが、居酒屋チェーン店「和民」で知られるワタミフードサービスです。同社の子会社、株式会社ワタミファーム(武内智社長)は、千葉県山武(さんぶ)町と白浜町、北海道瀬棚町、群馬県倉渕村に、合計九十ヘクタールもの広大な直営農場を展開。そこで取れた作物をワタミの店舗で利用するほか、約二〇%を大手スーパーなどに販売しています。
失敗すればすぐに撤退、ツケは町民の肩に重くさかんにもてはやすマスコミマスコミは盛んに「農業の新たな担い手」「先駆的なビジネスモデル」ともてはやします。町も「産業の集積や新規産業の創出等により地域経済が活性化」すると、手放しの期待を寄せますが…。「本当にもうかっているんでしょうか。ちゃんとした責任者もいないようだし…。まあ、赤字でしょうね」。ワタミ山武農場の近隣農家は冷めた目でみています。 二月にワタミが町に提出した「農業経営実施計画書」によれば、現在、二・六ヘクタールの作付面積で売上高は三千万円。〇九年には十ヘクタールに増やし、一億円に引き上げるとしています。ワタミによれば、山武農場での作物は、レタス、ミズナ、イタリアンパセリなど。四人の正社員と十数人のアルバイトが農作業に従事し、遠方から通っている人もいるそうです。 先の農家は「うちはワタミの倍の農地だが、売上高は半分もいかない。どうして三千万円という数字がでてくるのか」と吐き捨てるように言います。さらに、四人の常時雇用と十数人の臨時雇用。人件費は親会社が持っているのでしょうか。
農地法は壁と敵視するワタミ耕作者主義=家族経営を基本とする現行の農地法では、株式会社は直接、農家から土地を買ったり、借りたりすることはできません。二〇〇二年一月に、山武町で農場の運営を始め、〇三年十二月に、有機農業推進特区に認可されたワタミ。武内社長は「農業に縁もゆかりもない企業が農業に参入する場合には、二つの大きな壁がある」とし、その一つが「農地法により、個人や企業は勝手に農場を作ったり農業経営をしたりすることができないこと」だと、農地法を敵視しています。「地域に常住していない人が他人から指示された作業で、有機農業がうまくいくのか」と、疑問を投げかけるのは、農民連の組合員で、農業委員の佐瀬一之さん(49)。「本社の経営が悪くなればすぐに撤退するおそれがあります。残されるのは草だらけになった土地だけ。現にワタミの畑の一部は草だらけになっており、隣接する農家は草が生えてこないかと心配しています。特区であるため農業委員会のチェックも効かず、問題です」
進出企業応援より農民支援策こそ専業農家が残っている町では山武町では、以前、石油関連企業の「出光興産」が農地を利用して、サラダ菜栽培に乗り出したものの、数年間で失敗して、撤退したという苦い教訓があります。放棄され、荒れ果てた山地や農地三十五ヘクタールを町が五億円で引き受け、その負担のツケが町民の肩に重くのしかかっています。さらにワタミの農地は、町が農家から借りた土地を賃借したものですが、その借地料は当初十アールあたり三万円で、町の標準小作料の倍。金にものをいわせて優良農地を買いあさっているのです。これでは規模拡大を考える農家を排除することになるとして、農業委員会が借地料の引き下げを要請し、二万円に下げさせました。 佐瀬さんら農業委員会はこれまで、町内の営農を守るために尽力してきました。町は、地域農業振興策として、農業機械の購入に一割の補助金をだす独自の制度をはじめ、農作業を手伝う人を募集する求人票を集荷場、役場、公民館に張り出せるようにするなどの支援策を実施しています。佐瀬さんは「専業農家が多く残っている町でやるべきことは、進出企業の応援よりも、援農組織の立ち上げなど、今の担い手を応援する施策の拡充です」と指摘します。
(新聞「農民」2005.3.21付)
|
[2005年3月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224
Copyright(c)1998-2005, 農民運動全国連合会