「農民」記事データベース20050314-675-20

人を殺す武器は要らないの
命を育て、幸せにする食料が大切なのよ


 テレビや講演に引っ張りだこ

   料理研究家  小林 カツ代さんに聞く

〔プロフィール〕 大阪の商家の生まれ。1958年に大阪帝塚山学院短期大学を卒業し、国文学を専攻した異色の料理研究家・エッセイスト。NHKはじめテレビ番組や各種雑誌、講演などで活躍中。大の動物好き。主な著書に『小林カツ代のキッチン便り』(大和書房)、『黄金の和食レシピ』(講談社)、『美人粥』(文化出版局)、『料理上手のコツ』(大和書房)、『実践 料理のへそ!』(文春新書)他160冊。


 テレビや講演で引っ張りだこの料理研究家・小林カツ代さん。その忙しい合間を縫ってのインタビュー。歯切れのいい“カツ代節”で減反から食料政策、公共事業、防衛問題と自民党政治の責任をバッサ、バッサと斬りまくってくれました。


 悪政の張本人自民党です

 全国を回っていて感じますのは、お米の問題じゃないかしら。行く先ざきで荒廃した田んぼを見ると「この国は一体どうなっちゃったんだろう」という思いがします。

 自民党というのは農民に支えられてきたはずなのに、お米を大事にしない政治をしてきた張本人なんですね。農家の人たちは「自分たちの暮らしを良くしてくれるのは自民党だ」と錯覚していたんではないですか。

 私は「お米さえあれば何も恐れることはない」という考えなんです。今「北朝鮮が何かしでかすんじゃないか、ミサイルが飛んでくるかも」とか新聞やテレビが報道してるけど、もっと恐ろしいことが、この「瑞穂(みずほ)の国」で起きているんですよ。私は荒れ果てた田んぼを見るのが一番つらいですね。

 減反の一方で有明海埋める

 食料自給率が四〇%、穀物自給率が二〇%にまで下がっているのに、まだ外国からの輸入を増やそうというんでしょ。外米を輸入する一方で「減反」だなんて、とんでもないですよ。

 減反させてまで自給率を下げている国が世界のどこにあるのかしら? 不思議ですよね。

 もっと不可解なのは、有明海の諫早埋め立てですよ。減反を強制している一方で、農地を増やそうというんでしょう。そのために海が汚染され、ノリも魚もとれなくなって、それでも工事をやめようとしない。

 政府は、農民や漁民の暮らしよりも、工事を請け負ったゼネコンの方が大事なんでしょうね。

 命を守るのは武器ではない

 そして政府は「防衛」問題には積極的ですが、日本人の命を守るということで大切なのは「食料問題」です。

 人間の命を育て、永らえているのは食べ物のおかげです。それを作っているのは農家であり、漁業の人たちです。ところが政府は、高いお金をつぎ込んで武器を作ったり、買っています。

 政治家は「食と農」の問題を、もっと真剣に考えるべきです。私は一人一人の政治家に「あなたはどう思いますか」と質問を突きつけたいくらいです。

 日本の軍事費はアメリカに次いで世界第二位なんですね。今度は北朝鮮から飛んでくるミサイルを打ち落とす「迎撃ミサイル」に大変なお金をつぎ込もうとしている。

 あれはアメリカのためなんですね。相手のミサイルがアメリカに届く前に迎撃しようというんでしょ。なぜ日本が高いお金をかけて装備しなければならないんですか?

 私は一度、ファントム戦闘機一機を食べ物に換算したことがあるんです。おむすびやアンパンに換算すると、日本人全部がかかっても食べ切れないんです。家中の部屋から隣の家から町全部が、おむすびだらけになるくらいで、小さな国なら一年分食べていけるくらいのお金でした。

 違憲の軍隊は要りません

 日本は「軍備をしてはいけない」国なんです。憲法では「戦争放棄、軍備および交戦権を否認」している国ですよ。

 ところが「軍隊があるのに憲法では明記されていないのは、おかしい」と言い出している。憲法違反の自衛隊を作っておいて「自衛隊を軍隊として認める憲法に変えろ」というんでしょ。そんな理屈こそ「おかしい」ですよ。

 食料をありあまるほど生産

 「防衛のための武器」といいますが、あれは「人を殺すため」だけのものです。だけど「食料」というのは「人を生かすため」のものです。

 人を生かし、人を楽しませ、命を永らえさせ、病気を治してくれることすらあるのが食べ物です。

 だから、食料にもっと多くの予算を使ってほしい。農業対策とか漁業対策などにお金を使うことです。日本の食料が有り余るほど生産されたら、飢餓で苦しんでいる国の人たちを援助してあげるんです。食料を贈ってもらった国は感謝こそすれ日本に攻めてくることはないでしょう。

 本当の「防衛」というのは「武器」で守るのではなく、お互いの国同士が仲良くなれる「食料」外交だと思うんですけどね。どう思います?

(聞き手)角張英吉
(写 真)関 次男

(新聞「農民」2005.3.14付)
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2005年3月

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