「農民」記事データベース20050228-673-07

大豆の香りしてとてもおいしい

みそ作り真つ盛り

千葉・酒々井町 柏木水稲生産組合みそ加工所


 「せーのっ」―息の合った威勢のいい声が響きます。千葉県酒々井町の柏木水稲生産組合は今年、みそ加工所を新設。春耕までのこの時期は、みそ作りの真っ盛りです。原料の大豆、米はもちろん純国産。「大豆の香りがして、とってもおいしい」と好評です。

 朝の張りつめた空気にモウモウと上がる湯気。圧力をかけて大豆を蒸すこと約三十分。釜から木のたらいにあけると甘く香ばしいにおいがたち込めました。組合では、週に三日、一日に四俵の大豆をみそに加工します。

 “週に三日”は自前の麹(こうじ)作りに三日かかるため。麹作りには、育苗機を利用します。出来上がった麹を見て、竹尾忠雄さん(千葉県農民連副会長)は「うん、いい出来だ」。「最近は麹屋が減って、近隣の市町村から注文や委託が増えている」そうです。

組合員の機械利用料 町平均の半額

 手際よく進む作業

 大豆が蒸しあがり、麹ができて、いよいよみそ作り。大豆と麹、塩、水を混ぜてみそ練り機にかける人、みそをたるに詰める人、作業は実に手際よく進みます。三時間ほどで、約八百五十キロ、三十二個のみそだるが出来上がりました。

 そこへ、注文したみそだるを受け取りにきた和田良子さん。「ここのみそを購入するようになって三年目。娘の友達も、おいしいって言うの」と太鼓判を押します。一たるの量は約二十七キロ、一家族のほぼ一年分です。「二五度以上で四十日間が熟成の目安。九月ころから食べられますよ」と声をかける竹尾重尚さん(44)。重尚さんは組合の若手中心メンバーです。

共同の農産加工がもの作りを再興させた

 矛盾をみごと克服

 重尚さんのお父さんや忠雄さんたちが組合を立ち上げたのは二十九年前。機械の共同利用を進めながら、自家用の麹、みそを一緒に作り始めたのは、自然の成り行きでした。でも今では、この農産加工が大きな意味を持っています。

 竹尾和代さん(56)は六十アールの兼業農家。「組合員だから米を作りつづけられる」と言います。組合員の稲刈りから乾燥までの利用料は十アール一万八千円。町平均の委託料の半額です。いま米価暴落のなかで多くのライスセンターが、委託料を上げれば利用率が下がり、耕作放棄地が増える、委託料を下げれば経営が成り立たないという矛盾を抱えているなかで、柏木水稲生産組合は、農産加工でこれを克服しています。

 重尚さんは八年前に脱サラして一・四ヘクタールの田んぼを継ぎました。「すべて加工して、自分で売るからやっていける」と言います。また、忠雄さんの長男、謙一さんも四年前に就農。「近所でにぎやかにやるのが楽しい。次の世代のおれたちが力合わせて、農業できる環境を作っていきたい」と語ります。

 昔ながらの地域のつながりや共同の力が、もの作りを再興し、後継者を育て、厳しい農業情勢のなかで一筋の光明として輝いています。

(新聞「農民」2005.2.28付)
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2005年2月

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