「農民」記事データベース20050221-672-06

アメリカ産牛肉輸入禁輸問題 今後の行方を探る〈下〉


米国のズサンな安全策見直しこそ

 アメリカ農務省のジョハンズ新長官は、一月二十七日、加藤良三駐米大使を農務省に呼び、アメリカ産牛肉の早期輸入再開に応じるよう強く求め、再開日程の明示を迫りました。

 アメリカ有数の畜産州ネブラスカの知事も務めたことがある同長官。その目に映るのは、自国の食肉業界の利益だけ。アメリカ産牛肉に対する日本の消費者の不安は、まったく眼中にないというごう慢な態度です。

 食肉企業の事情

 現在、アメリカ産牛肉の輸入を禁止または制限しているのは、日本をはじめ、韓国、中国、メキシコ、ブラジルなど五十五カ国・地域。アメリカ食肉業界最大手のタイソン・フーズは一月六日、輸出停止を理由に、国内四カ所の食肉処理工場の操業を一時停止すると発表しました。アメリカの執ような解禁圧力の背景には、禁輸が長引くなかでのこうした巨大食肉企業の事情があります。

 しかし、最近の出来事は、アメリカのBSE対策に対する不信感をますます増大させています。アメリカの食肉検査官の労働組合は昨年末、BSE病原体のたまる特定部位 の除去が守られていないと、複数の食肉処理場を告発。また、今年になってカナダで二頭の感染牛が見つかっていますが、アメリカ政府は、そのカナダからの生体牛の輸入を三月にも解禁する予定です。

 もともと日本とアメリカの安全対策には天と地ほどの隔たりがありますが(表)、解禁を求めるなら、まずアメリカのズサンな安全対策を抜本的に見直すことが絶対に必要です。

 解禁は背信行為

 二月四日、日本で初めて、BSEが感染したとされる変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の患者が確認されました。この男性は、BSEが多発していた八九年ごろ、イギリスに一カ月ほど滞在しており、その間に感染した可能性が高いと見られていますが、はっきりしたことは分かっていません。これを受けて厚労省は、献血禁止の条件となるイギリス滞在歴を六カ月以上から一カ月以上に短縮しましたが、これまでにこの患者が献血したかもしれず、“後手の対応”という感はぬ ぐえません。

 〇二年四月、BSE調査検討委員会は、BSEの発生を許した政府の危機管理のまずさを「重大な失政」と断じ、ここから全頭検査がスタートしました。いま、外圧に屈して、安全性がまったく確認されていないアメリカ産牛肉の輸入を解禁することは、単なる失政の再発にとどまらず、国民と農民に対する背信行為に他なりません。

(おわり)

(新聞「農民」2005.2.21付)
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2005年2月

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