「農民」記事データベース20050214-671-07

教育基本法の改悪は許せない

全農研事務局長 相原 昭夫さん

 教育基本法の改悪がたくらまれています。全国農業教育研究会(全農研)の事務局長を務め、長年、農業後継者を育ててきた相原昭夫さん(68)=東京都立川市在住=に、農業教育と教育基本法に寄せる思いを語ってもらいました。


教基法の改定問題と直結している農業教育

 一九六四年から三十三年間、農業高校の教員を務め、農業教育に携わってきました。農業教育は、農業後継者を育てることと、農業にたいする正しい認識を育てることの二つが大事な点です。

 農業高校の統廃合

 私が教員に就任した当時は食料自給率も高く、農業に希望が持てたのですが、六一年に農業基本法が施行されて以降、減反、農産物輸入自由化など、もう農業はいらないと言わんばかりの施策が次々と出されました。農業高校はどんどん統廃合され、三分の一ほどに激減しました。学科も、農業科や畜産科が廃止され、総合学科に統合される傾向にあります。

 国の農業施策に呼応して、教育が左右される場面に何度も直面し、そのたびに疑問を持ち、怒りを感じてきました。農業教育が農政と直結しているのがよくわかりました。それは、文部省(当時)の教育指針である「学習指導要領」の「農業教育の目標」が次々と書き換えられてきたことにも示されています。

 「要領」の「農業の各分野における生産や経営に関する基礎的、基本的な知識と技術を修得させ」という文章から「生産」の文字がそっくり削られ、「農業技術の科学的根拠を理解させ」という文章も削除されました。さらに「教育基本法にもとづいて」の文言も消え去りました。

 現職の先生を応援

 農業技術の科学的根拠への理解なしに、やり方だけを教えることは、教育とは言えません。

 また、農基法時代の卒業生の多くが「先生に教わった通りやったが、だめだった」と言ったのが忘れられません。それは“国の農政に応える農業教育”の帰結でした。

 教育には、何が必要かを考えるとき、それは歴史的な観点に立つことだと思います。私にとって、教育の自由と学問の自由とが結びついたのは、家永三郎氏の教科書裁判で出された「杉本判決」でした。そこでは、教育基本法の理念に触れ、国家による教育内容への介入の否定と教師による教育の自由をうたっています。

 学生時代に教育実習の指導教官から「先生の仕事は、農学ではなくて、農業を教えることだ」と言われましたが、そういう言い方は、学問と教育を切り離した行政の考え方であったことが、この教科書裁判でわかったのでした。

 農業教育も教育基本法改定問題と直結していることを多くの教員に知ってもらいたい。現実に流されて、理想を捨ててはいけません。今後も理想を追い求める現職の先生を応援していきたいと思っています。


 全国農業教育研究会 一九七一年に発足。農業高校をはじめ小・中学校の教員で構成され、「食と農と環境」をテーマに、毎年の大会で教育活動の報告や情報交換を行っています。会報・研究誌を発行し、実践記録や研究論文、意見を交流しています。

(新聞「農民」2005.2.14付)
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2005年2月

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