私と憲法
茨城県常陸大宮市永井照胤さん（82歳）（みどり農協和牛部会長）
結婚式予定日が出兵日だった戦争の苦しみは二度と一九四五年二月、勤労動員で石炭掘りをしていた福島県いわきから帰ってくると、地元の区長が「嫁もらって百姓しろ」ということで、三月二十日に結婚式をあげることになりました。ところが、なんとその日に「津田沼にある部隊に出頭しろ」という召集令状が来てしまった。私は結婚の解消を申し出たのですが、「銃後の嫁」ということか、一週間早めて内輪だけの結婚式をあげて出兵しました。
自決用手榴弾一つ半月かかって着いたソ連と蒙古と満州の国境沿いにある町、ハイラルは北満の要衝で約三万人が住んでいました。私は二等兵で、軍隊はどろぼうと無法者の集まりのようでした。しかし良心的な人もいました。下士官候補の募集があったとき、私の所属した班長は「お前を一番に推薦したいが、軍隊は長くいるところではない。一日も早く郷里に帰る算段をしろ」―こう言ってくれたのです。もし下士官になったら、私は最前線で戦死していたでしょう。ソ連軍は八月九日早朝、戦闘機と戦車で満州に侵攻。私は、決死隊に選ばれました。二人組みで爆雷を一つ持たされ、銃剣と二十発の弾と自決用の手りゅう弾一つ以外、すべて捨てさせられました。夜になると日本軍が火を放ったために、町中が火の海に。「もうだめだ」と、四人で隠れて様子を見ることにし、「生き延びられるだけ生きよう」と後方の陣地に移動することにしました。しかし一人の仲間が「俺（おれ）は体力がなく、とてもそこまで歩けない。敵の戦車に飛び込ませてくれ」と、自爆してしまいました。
帰国を夢見ながら私たちは、満州原野を放浪したのちソ連軍の捕虜となり、シベリアでは多くの戦友が、過酷な労働と酷寒、飢餓で、帰国を夢見ながら帰らぬ人となりました。私が、妻の待つ日本に帰国できたのは四年後のことでした。戦争は二度と起こしてはならないし、苦しみを繰り返してはなりません。いま、全国各地で「九条の会」が結成されていますが、地元でも準備会ができて、私も呼びかけ人の一人になりました。憲法を守るために、私も一生懸命運動を広げていきたい。
（新聞「農民」2005.2.14付）
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［2005年2月］
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