「農民」記事データベース20050214-671-01

特色ある米作り農家を町独自に支援

長野・豊科町


国の農家切捨てのなか

1万円の補助金(10アール当たり)

 長野県豊科(とよしな)町は昨年十二月、有機米、特別栽培米に取り組む農家に、十アールあたり一万円の補助金を交付しました。国の補助金が一部の担い手農家に絞られ、多くの農家が切り捨てられようとしているなかで、町独自に、特色ある米作りの支援施策を実施しています。

 豊科町は、長野県のほぼ中央部に位置し、西には北アルプスの山々がそびえ立っています。町の七五%は、なだらかな扇状地で、地味肥よくな水田地帯になっています。人口二万八千人のうち農家人口は約七千人。農業粗生産額の四分の三を米が占める稲作地域です。

 認定基準の要件国よりも緩やか

 「これからは消費者が選ぶ時代。消費者に食べてもらう米は何かを考えるとき、生産者の顔が見える米を提供したい」。町の赤羽孝明・農政係長は強調します。町の水田農業推進協議会は「水田農業ビジョン」のなかで「特色ある産地づくり」の目標を掲げました。

60人弱に450万円(昨年末)

農家励まし、やる気起こさせ…

 こうした取り組みへの支援策として、昨年五月に、有機米、特別栽培米に取り組む農家への補助金交付を決定。対象は、営農支援センターが認める有機・減農薬栽培に取り組む農家です。国が定める認定基準よりも緩やかな要件です。

 町内の対象農家は六十人弱。そのうちの一人、降籏正道さん(61)は、七年前から有機米に取り組んでいます。四ヘクタール余りの水田を粗植で風通しをよくし、病気が入らないよう工夫した稲づくりをしています。二年前から有機・特別栽培を始めた細井正博さん(42)は「微生物との共存も大事」と、田に水を早めに張り、徐々に水量を加えていく深水管理で雑草が生えるのを防いでいます。


町の夢

“町の顔を作って消費者の信用をえたい”

 町独自の施策を充実・発展ぜひ

 昨年末には、有機米、特別栽培米を実施する六十人弱の農家にたいして四百五十万円分の補助金が支給されました。「農業後継者を作り、やる気を起こさせることにつながります。環境保全、食の安全を広めていくためにもいい制度」(降籏さん)、「稲作地帯の町で、米を守っていくことが大事。さらに充実を」(細井さん)と喜びます。

 赤羽係長は「町の顔を作って、消費者の信用を勝ち取り、町の知名度を上げるのが、私たちの夢です。こうした取り組みを全町民に知らせ、『豊科の米を食べてください』と訴えたい」と意気込みを語ります。

 町ではこのほか、集落特産物開発振興助成事業、玉ねぎ祭り振興助成事業、そ菜グループ栽培推進事業など、農家への単独助成事業を実施。有機農業に六年前から取り組んでいる、長野県農民連・中信農民センターの宮沢多助さん(65)は「町独自にこうした補助金を維持することは、農家を励ますことになります。努力している農家が報われる農業施策を維持し、さらに充実、発展させてほしい」と期待を込めます。

(新聞「農民」2005.2.14付)
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2005年2月

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