「農民」記事データベース20050207-670-02

米国産牛肉早期全面的輸入再開を求める会が
集める署名は、“牛丼屋の牛問屋に
よる牛丼屋のため”のものだった

 「米国産牛肉早期全面的輸入再開を求める会」という団体が、アメリカ産牛肉の「全面的輸入再開」を求める署名を集めています。ホームページでは「有名無名な消費者二百名の有志が集まり…日本政府に私たち消費者の声を届けようと立ち上がりました」と、一般消費者を装っていますが、その実態は、“吉野家の吉野家による吉野家のため”の署名活動。本紙の取材で明らかになりました。


米国産牛肉輸入解禁の署名

アメリカにエール送る吉野家

 「会」事務局員は吉野家の社員…

 「米国産牛肉早期全面的輸入再開を求める会」の事務所は、東京・日本橋のオフィス街のはずれ、食品情報サービス会社に間借りしています。同会を訪ね、応対した人の名刺をみると、吉野家の社員。もう一人の同社社員と二人で「会」の事務局を担当しているとのことでした。

 さらに、署名用紙や宣伝物の印刷代など「会」の財源は、「主に賛同企業・団体の賛同金でまかなっている」とのこと。ホームページを見ると、賛同者には、吉野家、松屋など大手牛丼チェーンをはじめ十七の企業と、日本フードサービス協会(JF)など五つの業界団体の名前が並んでいました。

 安全かどうかはそっちのけで

 「会」の主張は「SRM(特定危険部位)を除去した三十カ月齢未満の牛肉なら安全なのだから全面的に輸入を再開すべき」。人も金も吉野家なら、主張もまた吉野家のものです。いま小泉内閣は、国民の目をごまかして二十カ月齢以下に限定しつつ、輸入解禁への道すじをつけようとしていますが、これでは十分なアメリカ産牛肉を確保できず、不満だというのです。背景にあるのは、安全かどうかはそっちのけ、早く解禁してもらわないと業績が危ないという企業の論理だけです。

 実際に、国内産には目もくれず使用肉の九九%をアメリカ産に頼ってきた吉野家は、輸入禁止による、昨年二月の牛丼販売休止後、毎月の客数が最大四割減り、業績が悪化しているといいます。

 「会」事務局の吉野家社員に対して、「三十カ月齢未満なら安全だといえるのか」「アメリカに安全対策の強化を求めているのか」と本紙記者。しかし、まともな答えはありません。「どうやって『会』がめざす百万筆の署名を集めるのか」との問いに対しては、「賛同企業・団体にお願いして集めてもらう。店頭では積極的にやらない」という答えが返ってきました。

 国民の意思反映してない署名

 今や多数派になっている「不安なアメリカ産牛肉は、解禁されても食べたくない」という消費者の声に配慮して、イメージダウンにつながりかねない店頭での署名活動は自粛し、JFに加盟する外食企業などにお願いして、社員から集めるというのです。仮にこうしてある程度の署名が集まったとしても、それが国民の意思を反映していないことは明らかです。

 「米国産牛肉早期全面的輸入再開を求める会」=吉野家は「獅子身中の虫」(内部から災いを起こす者のたとえ)。安全対策の不備を棚に上げ、強硬に輸入解禁を迫るアメリカにエールを送るものにほかなりません。

(新聞「農民」2005.2.7付)
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2005年2月

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