「農民」記事データベース20050131-669-07

佐々木健三会長のあいさつ


 大会に参加された代議員、評議員のみなさん。日夜困難ななかで「農民の苦悩あるところ農民連あり」の気概で奮闘されていることに心から敬意を表します。

 前大会からの二年間、アメリカと財界言いなりの小泉政権はあらゆる分野で、財界などの使い勝手のよい日本にしようと構造改革路線を強行しています。農業分野でも例外ではありません。その象徴が「米改革」です。

 今年から始まったこの究極の米つぶし、農業つぶしの政策は一年も経たずに破たんする様相です。米の作柄は、一昨年は冷害で、昨年は台風や長雨の被害で、二年続けて不作になりました。本来であれば米価は上がるはずですが、下落し、米が動かないという状況になっています。

 「米改革」が農民に計り知れない打撃を与え、米価下落に対して政府の打つ手は何ら有効に働かないということが明らかになりました。結局、「米改革」や農業「構造改革」が、農業をビジネスチャンスにする財界のためだということがはっきりしたのではないでしょうか。

 度重なる災害農民の存在痛感

 前大会からの二年間は、たいへんな自然災害の年でした。一昨年の冷害、昨年相次いで来襲した台風、そして十月二十三日に起きた新潟県中越大地震―とりわけ昨年の台風と大地震は、大きな被害をもたらしました。新潟の被災地では今、雪や寒さとたたかいながら必死の復旧作業が続いています。

 新潟中越地方は、おいしい米の産地として、またニシキゴイの産地として名の通った、典型的な中山間地です。この美しい山里がまるで巨大な手でかきむしられたような傷跡を残しました。そして一時は十万人を超す人々が避難生活を余儀なくされました。

 この時、まず何より食べ物だ、ということで機敏に応えたのが農民連でした。長野県の仲間は、いち早くおにぎりや野菜、生活用品を持って支援に入りました。道路は寸断され、大きくう回してようやくたどり着き、食べ物を届けた人も受け取る人も涙ながらだったそうです。このような非常事態にあって、「ものをつくってこそ農民」の存在がどれほど大事かを、多くの国民が痛感したのではないでしょうか。

 その後、全国から、ふるさとの山河を守れとたくさんのボランティアがかけつけました。「困っているときはお互い様」という互助の気持ちは、農村における優れた伝統です。逆に飽食の時代を象徴するコンビニやスーパーが機能しなかったことも印象的でした。

 国際連帯の精神で要請に応える

 そうしたなかで、一昨年、経団連の奥田会長が言った「二千年来続いている家族経営という日本のビジネスモデルを壊し、さらなる自由化を」というセリフを思い出します。こういう浅薄な農業つぶしに断固として立ち向かい、全国の仲間が助け合って団結している農民連の存在感が、いっそう鮮明になったのではないでしょうか。

 十二月二十六日には、インドネシア・スマトラ島沖で巨大地震が発生し、大津波が世界各地を襲い、十五万人を超す犠牲者、五百万人を超す被災者が出ました。犠牲になられた方々に心から哀悼の意を表し、被災された国々と人々に心からお見舞いを申し上げます。

 被災した国々には、近年の国際活動を通じて連帯が強まっている国際的な農民組織、ビア・カンペシーナに加盟する組織がいくつもあります。農民連はインドネシア農民組合連合、スリランカ農業・農地改革運動などにお見舞いのメールを送りました。

 とくに、昨年四月の国際シンポジウムで来日したヘンリー・サラギ氏――インドネシア農民組合連合の委員長で、ビア・カンペシーナ・インターナショナルの代表でもあります――からは「支援物資が空港に滞留して、被災者に運ぶ手段がない。できればトラックが欲しい」との支援要請が届き、この大会にも熱い連帯のメッセージ(別項)が寄せられています。

 新潟県中越地震で発揮した助け合いの精神を国際連帯の場でも発揮し、サラギ氏の要請に応えるために大いに力を尽くそうではありませんか。

 このスマトラ島沖地震に対して、アメリカを中心にした有志連合の支援が拒否され、国連中心の支援活動が展開されることになりました。自然の脅威の前に全世界が協力し、復旧支援の活動に立ち上がるのを見るにつけ、アメリカによるイラク戦争が何とおぞましく、何と愚かしいことか。正義も道理もないイラク戦争をただちに中止すること、自衛隊は即時撤退することを強く要求します。

 米国産牛肉ノーさらに広げよう

 BSE問題もたいへん緊迫しています。この問題は、アメリカ言いなりになるのか、それとも国民の命と健康を守るのかのせめぎ合いです。

 日本は、二〇〇一年のBSE発生から「BSE特別措置法」を制定し、全頭検査を行って消費者の信頼を取り戻しました。ところが、一年前にBSEが発生したアメリカは、自らの国内対策の不備を棚に上げて、日本に輸入再開を強引に迫っています。

 このようなアメリカの無体なやり方に対して、国民の多数は許せないと考えています。また、プリオン病の研究でノーベル賞を受賞したプルシナー博士も「日本でやっている全頭検査が今の段階では、最も正しい安全対策だ」と語っています。国民の命と健康を守る立場から、「アメリカ産牛肉NO!」の声を草の根からさらに広げていきましょう。

 憲法改悪をたくらむ動きも強まっています。今年、自民・民主の二大政党がそろって憲法改悪案をまとめる方針です。まさに正念場の一年になります。

 私自身、父親をあの侵略戦争で亡くしました。父は、私たち残された家族にあてて「子どもたちが幸せに暮らせる世の中をつくってほしい」という遺書を残しました。

 六十年前、日本の侵略戦争によって、二千万人を超すアジアの人々、三百万人を超す日本人が犠牲になりました。この反省から二度と戦争しないという決意を込めた平和憲法、世界に誇れる日本の良心をしっかり守り発展させなければなりません。私自身、このたたかいの先頭に立つ決意です。

 強大な農民連めざし奮闘しよう

 さて、このように農民連に大きな期待が寄せられているなかで開かれる第十六回大会は、次の目標を掲げています。

 (1)要求を基礎に、農業と暮らし、地域を守る運動を大きく広げ、小泉「改革」や「二大政党」に対抗する国民的共同の流れを大きく発展させること(2)安全な農産物の生産を拡大し、今日の情勢のなかで生まれている「もう一つの流れ」を強く大きくすること、その中心として、会員と新聞「農民」読者を拡大する方針を確立すること(3)その先頭に立つ常任委員会を選出すること――です。

 農民連行動綱領の一部改定について一言触れたいと思います。行動綱領は一九九〇年の第二回大会で採択され、第七回大会で一部改正が行われました。今回の改定は、この間の情勢の変化や運動の発展、とりわけWTOやFTAの問題、農民運動の国際連帯の前進などがあり、これらを反映した提案になっています。

 前大会から全国大会が二年ごとの開催になり、今回はその初めての大会です。この間、国際シンポジウムの開催や分析センターの活躍をはじめ、様々な運動面での前進があり、「農民連ここにあり」を実証してきました。

 そうした経験や教訓をこの大会で大いに交流するとともに、地域で苦悩する農民に「農民連に入って一緒にがんばろう」と呼びかけ、強大な農民連へと発展することをめざしてともに奮闘しようではありませんか。

(新聞「農民」2005.1.31付)
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2005年1月

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