アメリカ産牛肉輸入禁輸問題 今後の行方を探る〈上〉
合理的な日本の全頭検査BSE発生にともないアメリカ産牛肉の輸入がストップして丸一年が過ぎました。日米両政府は当初、昨年四月の局長級会合で「夏を目途に輸入再開について結論を出す」ことを申し合わせましたが、安全・安心を求める国民の反対で断念。アメリカの要求を最優先にしたい小泉内閣の手足を、国民世論がしばっています。今後の展望を見ました。
線引きはできぬ「全頭検査を含めて、日本のBSE対策は非常に正しい管理をしていると評価している。検査する牛の対象月齢の線引きは、科学的にできない。二十カ月齢以下は絶対安全とは言えない。出荷するすべての牛を検査する日本の今の対策は世界で唯一、合理的だ」。昨年十二月、来日したスタンリー・プルシナーカリフォルニア大学教授は、食品安全委員会が開いた意見交換会などでこう述べました。プリオン病の研究でノーベル賞を受賞したプルシナー博士の言葉は、たいへんな重みがあります。しかし、アメリカ産牛肉の早期解禁をめざす小泉内閣にとっては、全頭検査をやめることが第一のハードルです。 コスト増を理由に全頭検査の導入をかたくなに拒むアメリカ。一方、日本政府は「輸入解禁には同等の安全対策が必要」と言ってきた手前、今のままでは解禁できません。それならいっそ、日本が全頭検査をやめようというのです。
未検査輸入承認厚労省と農水省は十月十五日、BSE全頭検査から二十カ月齢以下の牛の除外を食品安全委員会に諮問。その八日後に開かれた日米局長級協議は、二十カ月齢以下であることを証明できる牛は未検査で輸入を認めることで合意しました。しかし、こうした露骨な“先に輸入解禁ありき”のやり方に、食品安全委員会プリオン専門調査会の委員が反発。山内一也氏(東大名誉教授)は、本紙のインタビューに「順番が完全に狂っているのですから、専門調査会の委員として心外」と語り、一月二十一日の同調査会は本格的な論議に至らず、依然いつ結論を出すのか不透明なままです。
結論は持ち越しかりに二十カ月齢以下の輸入が認められても、まだ問題が残ります。トレーサビリティがないアメリカで、どうやって月齢を判別するかです。アメリカは肉質や骨格の成熟度で月齢を判別する方法を主張し、当初昨年中の結着をめざしましたが物別れ。一月十九日に判断基準を厳しくした妥協案を示しましたが、疑問を投げかける専門家もいて、結論を二月以降に持ち越しました。小泉内閣にとって、アメリカ産牛肉輸入解禁への道のりは、けっして平坦ではありません。食の安全をないがしろにする勢力を、国民が追いつめていると言っても過言ではありません。 (つづく)
(新聞「農民」2005.1.31付)
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[2005年1月]
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