WTOは世界の農業と食糧に何をもたらしたのか 》中《―いま世界の農民が団結してたたかう時
農民連専従者研修会でのインドNGO活動家 デビンダ・シャルマさんの講演
農民苦しめる輸入農産物現在の飢餓人口八億四千万人が、二〇一五年までに十四億人に増えると予想されています。しかし、WHO(世界保健機関)の予測によれば、いま世界中で生産している食料を均等に配れば、すべての人が必要なだけもらっても、まだ余ります。
余っているのに…インドでは、二〇〇一年から〇二年の収穫年の余剰食料は六千五百万トンもありました。それにもかかわらず、インドの飢餓人口は、世界の飢餓人口の約三分の一を占め、インド政府は、余剰穀物をどう処分したらいいのか苦慮しています。倉庫に食料が余っているのに、政府は、それを飢えている人に分配しないで、市場に出していました。小麦と米、一キロあたり十セント、十一円ぐらいでしたが、それも買えないぐらい貧しいのです。 世界食糧サミットでは、二〇一五年までに、飢餓人口を半分、つまり四億人にすると決めました。しかし、今でも毎日、飢餓で死ぬ人の数は、世界中で二万四千人です。このままで行くと、FAOの目標である一五年までに、一億二千二百万人は飢餓で死んでしまう計算になります。 それにもかかわらず、食糧難になるから新しい技術、たとえば遺伝子組み換えの技術で増産しなければならないと宣伝されています。これは多国籍企業が食料を支配するための宣伝ではないでしょうか? その前になすべきことがあるのではないでしょうか?
WTOが農民殺すここで、飢餓と貿易のこともみなければならないと思います。この二十年間に、世界銀行とIMF(国際通貨基金)の融資が盛んに途上国に行われてきました。国内の自給用の作物ではなくて、輸出用の作物に切り替えるという条件つきでです。世界の主要農産物の輸出国をみると、アメリカの農民は、補助金をもらいつつ、麦などを作り続けている。ヨーロッパの農民は、トウモロコシを作り続けている。だれも作物を多様化しようとしません。 世界の農民にとって、これはどういう結果をもたらしたのか。アメリカの農民は少なくなってしまいました。ヨーロッパでも一日三人ぐらいの割合で離農が進んでいます。日本も、このままで行けば、農民がいなくなるのではないでしょうか。 ご存知のように、メキシコのカンクンで、一人の韓国の農民が自殺しました。「WTO(世界貿易機関)は農民を殺す」と言い残して。どうやってWTOは農民を殺しているのか。 これは、一国の農民を、別の国の農民と敵対させるということが基本にあります。韓国の農民は中国からの安い輸入品に苦しんでいます。日本は、アメリカの安い農産物に苦しんでいます。ところが韓国を苦しめている中国の農民も同じようにアメリカの安い農産物に苦しんでいます。 (つづく)
(新聞「農民」2004.12.13付)
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[2004年12月]
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