本の紹介地域農業もうひとつの未来―農政転換を足元から中嶋信・神田健策編
勢い増しつつあるもうひとつの流れ私たちの食糧・農業・農村・農協が当面している多くの課題は、あまりにも手強そうに見えます。しかし、多くのマスコミが流す一方的な情報のかげで、「もうひとつの流れ」が足元から、しだいに勢いを増しつつあります。この本は、日本と世界の食糧・農業・農村・農協で、いま確かな流れに発展しつつある「もうひとつの流れ」を理論と実践で紹介し、読者を励ましてくれる、まことに時宜を得た好著です。第一章「地域農業の新たな動向と国民生活」(中嶋信)では、いま進められている「農政改革」がもつ食生活や地域生活との対抗関係をうきぼりにし、「もうひとつの農業」の可能性を検証しています。 第二章の「市民・農民運動のグローバルな展開」(真嶋良孝)では、近年の農民連・食健連を中心とした国際連帯活動を通じて身近になった国際的NGOと農民運動・市民運動の実践から、ますます顕在化しつつある「食糧主権」をかかげた「もうひとつの世界」への大きな潮流が描き出されています。 第三章「小泉“農業構造改革”と地域農業再編」(神田健策)は、「構造改革特区」のもとでの「農業特区」の実相と特徴を分析し、国民が求めている国内農業・地域農業の振興策との対抗関係を明らかにしています。 第四章(新潟県西山町と佐渡農協労組)、第五章(大分県大山町)、第六章(山形県庄内・共立社生協)では、いずれも地域住民の自主的協同による「もうひとつの地域づくり」への実践を紹介。 第七章「安心・安全な食生活が都市と農村を変える」(竹下登志成)では、近年、食生活の不安から全国的に広がり続けている直売所と地元生産物による学校給食に焦点をあてて具体例を紹介し、生産者・消費者の地元からの交流と地域経済活性化、そして今後の課題を示しています。 こうして食料・農業をめぐる「もうひとつの未来」が、いま私たちの身近なところから始まっていることを実感させてくれる実践の手引書ともなっています。 (山本博史)
(新聞「農民」2004.11.29付)
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[2004年11月]
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