「農民」記事データベース20041115-660-18

岐阜・白川郷“どぶろく祭り”

幻想的な祭りと雄大な自然にほろ酔い加減

守りたい合掌造りと結の心

 初秋のころ、岐阜県農民連名誉会長の岩田昭さんと、白川村の「どぶろく祭り」を訪れました。
(福傳活人)


 合掌造りで有名な岐阜県大野郡白川村。九月二十五日から十月十九日まで、五つの集落ごとに「どぶろく祭り」が行われます。十月十四〜十五日の白川八幡神社(荻町)の祭りは特に有名。その歴史は和銅年間(七〇八年―七一四年)までさかのぼると言われています。

 “7杯飲みました”

 祭りは、午前八時から始まり、まず神社で「試楽祭」、「獅子舞の奉納」。午後三時まで「御神行」の行列が、笛や太鼓を打ち鳴らしながら、村中を練り歩きます。

 三時半ごろから、祭りの目玉で、名前の由来にもなっている「どぶろく」が、地元の人や観光客に振る舞われます。五時までの酒宴の間「奉芸殿」という特設ステージでは、郷土の踊りや民謡が披露され、二時間の休憩のあと、獅子舞奉納や郷土芸奉納。祭りは夜遅くまで続きました。

 突然降り出した雨を気にもかけず、約三千人が、どぶろくに酔いながら大いに盛り上がります。今年、この祭りのために仕込まれたどぶろくは約六千リットル。「きったて」と呼ばれるお酌用の容器を持つかっぽう着姿の女性が、次々に差し出される特製の杯に、どぶろくを注いでいきます。獅子舞見物とどぶろくを飲みに来たと言う四十代の女性は、「七杯飲みました」とほろ酔い加減で答えてくれました。

 人と人との結びつき

 多くの人々をひきつけるこの祭り。周りを雄大な山と林に囲まれ、色鮮やかに激しく踊る獅子、笠を自在に使う踊り子、途切れることなく続く太鼓と笛の音。訪れた観光客は、どぶろくに酔うばかりではなく、この幻想的で懐かしい雰囲気に酔うのかもしれません。

 地元の住民は、力を合わせて祭りを準備し、主催しています。消防団の法被を着て、祭りの進行を助け、見守っている男性たちの多くは、普段、別の仕事をしています。地元の建設会社で働く三十代の男性は、「祭りや火事といった人手を多く必要とする時は、村人全員であたります」。白川郷に伝わる神と人、人と人の結びつきを強める「結」(ゆい)の心を見たような気がします。

 合併に加わらず

 一九九五年に、白川郷の合掌造り集落が、世界遺産に登録されました。それ以来、どぶろく祭りに訪れる観光客は年々増えています。村民は村の発展を喜ぶ一方、ホテルや駐車場など大型開発による自然破壊を何より恐れています。白川村で合掌造りの自宅を利用して民宿を営む太田房江さんは、「地元の自然と合掌造りを守るため、大型開発にはもちろん反対」と話していました。

 自然や伝統を守り、地域の特性を生かすことによって、村おこしに成功している白川村。そして、同村は当面、飛騨地域の市町村合併に加わらず、単独で行政運営を行っていこうとしています。全国的に合併が進み、地方特有の伝統や文化が失われてゆくなか、どぶろく祭りは輝きを増しています。

(新聞「農民」2004.11.15付)
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2004年11月

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