ナタネへの夢(下)楽農倶楽部の仲間たち
夢がどんどん広がって搾油率は工場で大違い「搾油は、いい工場で搾るに限る」――これは各地を見た私の経験的結論でした。事実、小諸の女性たちと荻原さんのナタネ油は一年目(〇一年)、茨城県西農民センター常用の搾油所にお願いして搾ったところ三三%、二年目は三五%。しかし三年目、長野県内の搾油所で搾ったら二三・七%。そこで今年は、また茨城で搾って三七%――という大きな差がありました。かつて青森県横浜町で、他県の搾油所に委託したら二五%だと聞いたことを思い出しました。機械の性能が悪いのか、量をごまかされたか、いずれにしても搾油所による率が大きく違うのは事実です。
自分たちでまず楽しもう「搾ったナタネ油をいくらで、どう売るか」で一晩会議を開きました。でも、なにかピタッとこないのです。やはり「油を売る」という語呂はあまり良くないのです。楽農倶楽部に相応しく、「三十五缶(一斗缶=十六・五キロ)くらいは自分たちで使おう」ということになりました。当初、小さな缶かペットボトルに小分けしてもらえないかという話もありましたが、「数人で大缶を買い、みんなで石油ストーブに使うポンプで一升瓶に移すと簡単で安上がりだ。現金引き換えなら楽農倶楽部の事務局の手も煩わせずにすむ」。 いざナタネ油が届いたらあっという間に売り切れ。お盆に仏様にお供えし、「甘い」「しつこくない」「昔の味だ」「絶対ほかでは手に入らない」「遺伝子組み換えなし」と女性に大評判でした。 市内の造り酒屋から「ソバ焼酎にしたいから作ってくれないか」と荻原さんが頼まれ、相談の末、ナタネの後作に共同でソバをまきました。作業は西耕地の数人だけ。ネギの除草で腰を痛めた私は見ているだけ…。
「来年も!」と皆で種まき九月中旬、来年のためにさらに畑を借り増してナタネの種まきです。去年の経験から、全面播種ではなく条播種。交替で五人並んでまくと一・二ヘクタールばかりで二時間。その後、荻原さんの小屋でイッパイやる時間が三時間。参加した十二人のうち二人はイッパイの準備をしたくらいですから、野菜の天ぷらやどじょうの煮付けやら、覚えきれないほどのごちそうでした。この他に、「油はいらないからミツをとらせてくれ」という養蜂家の小林徳三郎さんがキザキノナタネを分けてもらって、四十アールほどまきました。 県は来年度からナタネ栽培十アールにつき一万円の奨励金をつけることになり、申請しました。 ナタネは湿気に強いし、雑草を抑えるし、水田の転作に取り入れたら…。機械を利用して、ナタネのほかに大豆や小麦も輪作して、地元の醤油(しょうゆ)屋さんに麹(こうじ)を分けてもらって手づくり醤油も。お米に、ナタネ油や醤油をつけて消費者に届けたら…――夢が大きく広がっています。 (おわり) (佐久楽農倶楽部 小林節夫)
(新聞「農民」2004.11.15付)
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[2004年11月]
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