憲法学習
農民連全国委員会での講演(下)
日本共産党前参院議員 小泉 親司さん
いっそう輝きを増す9条
憲法を国政・暮らしに生かしてこそ
9条改悪のねらいイラク派兵で加速
改憲のねらいは、九条を変えて、日本がアメリカと一緒に戦争できる国にしようということです。
最近のユニセフ・ニュースでアグネス・チャンさんがイラクの現地ルポを書いています。空爆で被害にあった人を取材して、「死んだんじゃない、殺されたんだ」と言われたことを紹介しています。イラクの圧倒的な国民が、今度の戦争で犠牲になっているのに、この無法で大義のない戦争が始まって一年半も経ち、自衛隊が多国籍軍の一員として派遣され、ますます自衛隊自身が武力行使をしなければならないということで、九条を変えようというねらいを加速しています。
ですから私たちは、「自衛隊はイラクから撤退せよ」の運動を、憲法改悪を阻止するたたかいのなかでも大いに広げていきたいと思います。
とんでもない「9条は古くなった」
「九条は古くなったから変えよう」と言う人がいますが、いっそう輝きを増しているのが九条です。
東京大空襲のときB29で爆撃したオーバービーさんという人が海外で「九条を守る会」をつくって世界に広めようとしています。この人は「先進国の中で、戦後一度も海外で人を殺したことのない国というのは、きわめてまれだ。日本の国民はここに確信を持つべきだ」と強調しています。
また「通販生活」という雑誌に「九条と私」という欄があって、料理家の小林カツ代さんと経済同友会元幹事の品川正治さんが書いています。小林さんは、「九条の碑」があるというので二十時間かけてスペインに見に行ったというんです。品川さんは、財界のなかにも改憲で、軍産複合体の国になることに反対している経済人がたくさんいる、と述べています。
京都新聞には瀬戸内寂聴さんがコメントを出しています。紹介しますと、東北の天台寺で法話をしていたら、中三の少年が「九条がなくなるとぼくは戦争に行かされます。それはいやです。日本はどうなるのでしょう」と問うてきた。そこで「なぜ戦争にいきたくないの?」と聞くと、「死にたくない。ぼく、やりたいことがいっぱいある」と答えた。そこで少年に「それじゃ憲法が変えられないようたたかいましょう。いっしょにがんばろうね」と話したら、この問答を聞いていた人たちから万雷の拍手がわき山々に響き渡ったというのです。
国連の平和原則が日本の憲法の中に
私たちは、非常に多くの人たちが「九条を守れ」という声をあげていることに確信を持つべきだと思います。
また、「この憲法は戦後の混乱期に押し付けられた」と言う人がいますが、憲法が制定された当時の状況を知ることが大事です。
一九四五年に国連憲章ができ、これをより徹底したのが日本の憲法です。国連の玄関を入ると、銃口がねじまがったピストルの像があります。これは二度と銃を持たない、戦争をしないという決意のあらわれです。この像のそばには、広島・長崎の「平和の鐘」がありますが、そういう国連の平和の原則が日本の憲法のなかに生かされたのです。
憲法をつくった占領軍の人でいまも存命の人が三人います。そのうちの一人、ベアテ・シロタ・ゴードンさんが国会の憲法調査会で発言しています。「あらゆる憲法を読んで一番いいところを全部入れた。とくに男女同権を太く入れた。この憲法を改正するなんてとんでもない」と。このゴードンさんの話は、「真珠の首飾り」という劇になっていますから、機会があったらぜひみてください。
9条以外のいい内容を広めよう
憲法には九条以外にもすぐれた特徴があります。それは、十一条から四十条に規定されている基本的人権です。とくに個人的な権利だけでなく、経済的人権つまり社会権を明記しているという点です。社会権とは、「国民が社会で働いて、人間らしく生き、文化的な生活を営むための権利」で、生存権、教育を受ける権利、勤労の権利、労働基本権などを言います。一九四八年に世界人権宣言が国連総会で採択されましたが、日本の憲法はそれに先駆けているのです。
九条以外にもすぐれた内容を持っているこの憲法の値打ちを多くの国民に広げていただきたい。そして、憲法を国の政治や暮らしに生かすことが一番肝心です。
二十五条で「国は、社会福祉、社会保障の向上増進に努めなければならない」と書かれているのに、小泉内閣は年金や医療をつぶしています。こういう国の政治をただしていくためにも、憲法改悪を阻止して、政治や暮らしに生かそうという運動をおおいに広げましょう。
(おわり)
(新聞「農民」2004.11.8付)
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