籾(もみ)で絵を描く長野・佐久市の木下恒男さん
農村風景や人物画など6万粒を40〜80色に染めて佐久市の私の近所に住む木下恒男さん(71)=写真〈写真はありません〉=は七年ほど前から、色を着けた籾(もみ)を一粒一粒ベニヤ板にはりつけて風景や人物を描いています。「ある年の暮近くなってコンバインを掃除したら、洗面器半分ほどの籾が出てきました。小鳥にくれるのは気が進まないので、これで黒と金の家紋を描き、玄関に飾ったら近所の人にほめられました」と木下さん。「おだてられていい気になって…」と謙遜しますが、なかなか独自の世界です。 籾を、絵の具を溶かした液に数時間漬けます。「籾殻ではダメですか」と聞くと、「中にお米が入っていないと染めても色が思うようにならない。充実した籾だと安定していい」という答えが返ってきました。 籾の数は六十五センチ×一メートルで六万粒。作品の大きさによって、色は四十〜八十色用意します。染めた籾は日なたで干すと胴割れになるので、三、四日陰干しします。 ベニヤ板に二十粒分(爪の大きさくらい)ボンドを塗り、ピンセットではりつけます。出来上がったらラッカーを三、四回吹き付け、防虫加工して仕上がりです。 「稲田」は浅間山を背景に田植えを終えた自宅に近い水田。空の色は季節にあわせて濃く、川の流れを表す時は籾の向きに注意したそうです。 初めは風景を描きましたが、だんだん動きのあるもの、人物の方が面白くなり、県老人大学の卒業式に出席した奥さんの袴姿も描きました。 「満開の桜の咲く千曲川沿いの遊歩道」「山車」「深山の春」「深山の紅葉」(写真上〈写真はありません〉)など、これまでに数十点。「人にほめられ、おだてられ、それを励みに描きましたが、最初が一番いいように思います。無心でやるのが一番だと身をもって体験しました」。稲作農民らしい「もみ絵」の話に時のたつのを忘れました。 (長野県農民連 小林節夫)
(新聞「農民」2004.10.18付)
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[2004年10月]
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