政府 需給調整どころか古米売りあびせ市場混乱米不足なのに米価暴落 その元凶は?業者 昨年産米の在庫を消化できず新米買いたくても…空前の安値になっている今年の米価。農家手取り(農協仮渡価格)は、輸入米を下回る一俵(60キロ)八千円台の産地・銘柄もあります。なぜ? お米が余っているから?――とんでもありません。昨年は大不作で、今年もせいぜい平年作。米不足なのに米価は下がる――この異常事態の元凶は、政府の米に対する責任放棄です。
農水省が公表した今年六月末の在庫は、官民合わせて二百六十七万トン。内訳は、政府米が六十万トンで、農協や流通業者が抱える在庫(民間在庫)が二百七万トン。昨年六月末と比較すると、政府米は百万トン減り、民間在庫は八十万トン増加しました。 一方、米の年間消費量は、政府の見通しで八百七十万トン。七〜十月の四カ月間で二百九十万トンが消費され、十月末には二十三万トンも不足する計算です(図)。実際には、この間に収穫された新米があるので不足は表面化しませんが、新米の“早食い”で食いつないでいるというのが実態です。 同じように来年の需給をシミュレーションすると、来年十月末の不足は八万トン。一見、不足が改善するかのように見えますが、これには重大な落とし穴があります。 第一に、政府米六十万トンのうち四十一万トンは、七〜八年前の超古米だということ。この米を主食用から隔離すると、たちまち四十九万トンの不足。 しかも、これは九月十日現在の作況一〇一にもとづく予想収穫量八百九十四万トンによる試算で、長雨や台風21号の被害を考慮すれば、この量を維持できないというのが大方の見方。さらに来年も不作になれば米パニックの再来も予想されます。
米が不足すれば、米価は上がるのが当たり前。ところが今年産米の入札では、一、二回とも過去最低の安値をつけ、それでも六割以上が売れ残り、九月二十八日の三回目の入札では、売れ残りこそ二割になりましたが、安値の実態は変わりません。 農民連米対策部の横山昭三事務局長は、こうした事態を「業者が昨年産米の在庫を消化しきれずに、新米を買いたくても買えない状態が原因」だと説明します。つまり、国が持つべき在庫を減らした分、民間が持たざるをえなかった在庫が、米価暴落の元凶なのです。 不足なのに値下がりする米の異常事態を打開するカギは、政府が売りすぎた分の米を早急に買い入れること。ところが農水省の石原葵事務次官は九月二十二日の記者会見で、「需給調整のための備蓄はやらない」と言い切りました。
需給の調整こそ政府本来の役割暴落時に政府がやるべきことは米を買い支えて需給を調整すること。しかし、いま政府がやっているのは超古米を売りあびせて米価をどん底に突き落とすこと。市場の暴走に悪乗りして、政府までが暴走しているのです。その結果、備蓄が自ら決めた百万トンの適正水準を大きく下回っています。「必要な備蓄量を確保しながら、需給を調整していくのが国の本来の役目。ところが国は、自ら『米ビジネス』をやり、需給を混乱させて、あげくに備蓄も底を切らしている」と横山さん。今回の米価の異常事態は、「民間ができることは民間に」という小泉改革路線にそって強行している米流通の完全自由化=「米改革」の結果です。主食・米の需給と価格の安定に国が責任を果たすことこそが求められています。
(新聞「農民」2004.10.11付)
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[2004年10月]
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