『きくまの民話と伝説』愛媛県菊間町
おたぬきさん(東町)じょうごやの前にどぶ川があって、そこに石橋がかかっとりました。はたには柳の木もあって、しばやのない折は暗うてさびしいきびわるいとこでした。 そこの石橋の下にたぬきが住んどりました。 あるかんかん照りの日のこと、瓦焼きの常八つぁんのとこいやって来たおたぬきさん。 「常八つぁん、常八つぁん、雨が降るぞな。」とゆうた。 常八つぁんは、 「こんなえゝ日に雨が降るかい!」と思たけんど、なんせ土でつくった瓦をひろげて干しとるじゃけん雨は困る、あわてゝかたずけた所へ大雨が降った。 喜んだ常八つぁんはあずきめしをごちそうした。それからも時々、 「常八つぁん雨が降るぞな。」と、ゆうて来よったが、そのうち雨も降らんのにゆうて来るようになった。 あずきめしが食べたかったんか、常八つぁんがあわてるのが面白かったんか、どっちぞしらんけんど……。 今は石橋ものうなって、あいきょうもんのおたぬきさんもおらんようになってしもて、つまりませんの、もし。 (「きくまの民話と伝説」より。話者は村上照子さん) (四国ブロック編集協力員 大道法幸=愛媛・菊間農民組合)
(新聞「農民」2004.9.20付)
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[2004年9月]
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