「農民」記事データベース20040913-651-06

佐久楽農倶楽部通信


異常高温が残したもの

 八月末のある日、事務局の井出一恵さんが「トウモロコシはもうダメね」と言って、肩を落とした。二十四日現在、昨年の五万九千本に対して、今年の出荷は三万七千本にとどまっている。九月半ばまで出荷する計画だから、まだ追い込めるわけだが、畑では収穫を待たずにロータリーをかけて、早々と終了宣言するところが相次いでいる。

 御代田町の丸山延夫さんは、三年前にトップクラスの反収をあげた。ところが今年は、八割以上オオタバコガ(幼虫)の食害に遭い、「こんなことになるとは…」と、信じられないといった顔で言う。

 防除に油断があったのか。そうではない。県の佐久農業改良普及所の堀澄人さんも「モロコシだけじゃない。レタスもやられて大騒ぎだ。もう手の施しようがない」と、お手上げ状態。「今年の高温では、佐久でものを作っていると思ったらダメ。(標高が低い)山梨あたりで作っていると考えなくては」と語っていた。

 虫食い、不稔(ふねん)がこんなに多くては、来年の生産意欲に差し障る―そう考えた事務局は、不良品も出荷するよう呼びかけ、昨日は市役所、今日は保育園というように、懸命に売り歩いた。「スーパースイートきぼう」の味の良さに助けられ、どこでも大好評で、リピートがかかり、宅配の注文も来て、こうして売った数は、ゆうに五千五百本を超えた。

 モロコシ部会の黒岩時保部会長は、生産者に気を配り、「ここでシュンとなってはいられない。元気を取り戻すために、みんなで一杯会を開くべし」と気を吐いている。

 あたりはソバが咲き乱れ、コスモス街道も花盛り。一気に実りの秋に突入だが、米価の暴落が待ち構えている。今年は、佐久楽農倶楽部にとって、初めて向き合う“受難の年”になるか。

(浄)

(新聞「農民」2004.9.13付)
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2004年9月

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