『きくまの民話と伝説』愛媛県菊間町
馬の坂の地蔵尊(松尾)その話しは、わしが坊主のころ、おじいさんからよう聞かされたもんじゃ。ほじゃけんそうとう昔の事じゃがのおぅ。今でゆうたら運送屋かいのおぅ……。 菊間は瓦の町じゃけに、おじいさんは馬で奥山い荷いを積んで行ったり来たりしよったんじゃ。窯に松葉や薪はつきもんじゃけに、馬の背中い荷いを山と積んで、ポッコポッコと下りてくるのを見よったもんよ。 いっつもは一匹じゃけんど、その日は二匹連れて中の川い松葉を積みにいたんじゃそうな。二匹じゃと倍もうかるけに、 「今夜は酒も倍飲めるなあ。」じゃの思いながら、ポッコポッコと上がって行ったそうな。 一匹に荷いをして、さて、 「もう一匹に荷いをしようかな!」……と思とると、何に驚いたもんやら先の馬が急にあばれだして、引き止められんままに、下向いて走り出したんじゃと。悪い事にその馬は暴れときて、おじいさんは後の馬を引いておりながら、 「あいつは暴れじゃけに人様にけがさせんように、あいつもけがないように。」と、途中にある「馬の坂のお地蔵さん」に祈ったんじゃと。ほいたらなんと、うまい事にお地蔵さんの前で草を喰いもっておとなしゅう待っとったんじゃと。走った坂がきつかったけん止まったもんか、それとも疲れたけん止まったもんか、とにかくうまい事お地蔵さんの前で待っとった。 そいから、そのお地蔵さんは願が叶うゆうて、みいなにゆうて回っとるおじいさんを、わしは今でもよう覚えとる。不思議なことよ。 (「きくまの民話と伝説」より。話者は、河原田文次さん=菊間農民組合長) (四国ブロック編集協力員 大道法道=愛媛・菊間農民組合)
(新聞「農民」2004.8.16付)
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[2004年8月]
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