「農民」記事データベース20040809-647-01

遺伝子組み換えの輸入ナタネ
鹿島港周辺で運搬中こぼれ落ち自生

農水省調査で判明

 食用油や飼料向けに輸入されている遺伝子組み換えナタネが、運搬作業中などにこぼれ落ち、茨城県鹿島港の周囲で自生していることが、農水省の調査で明らかになりました。商業栽培されていない輸入国での遺伝子組み換え汚染が明らかになったのは、恐らく世界でも初めてです。


国内での遺伝子汚染広がりはじめている

花粉飛散で国産と交配

 国内で栽培認られぬもの

 この調査は、二〇〇二年五月から今年三月にかけて実施されたもので、鹿島港の周囲五キロ以内の、交通量の多い交差点など四十八地点でナタネを採種し、外来種かどうか調べました。

 その結果、二十五カ所で植え込みなどに西洋ナタネが自生していることが判明。さらに種子の遺伝子分析をおこなったところ、二十サンプル中六サンプルから、除草剤をかけても枯れない除草剤耐性の組み換え遺伝子が検出されました。つまり鹿島港周辺の自生ナタネの半数が外来の西洋ナタネであり、一四〜一五%が、遺伝子組み換えナタネだということです。

 しかも検出された組み換え遺伝子三種類のうち、二種類は日本国内での栽培が許可されておらず、もう一種類も「安全性に問題がある」として、EU委員会では栽培はおろか食用としても認められていないもの。このような遺伝子組み換え作物が、堂々と日本の港周辺の道路沿いに生えていることになります。

 輸入作物の80%組み換え

 日本では、一九九六年に遺伝子組み換え作物の輸入を認めて以来、すでに八年が経過。この間毎年、トウモロコシ(千六百万トン以上)、大豆(四百八十万トン以上)、ナタネ(二百十五万トン)などがアメリカ、カナダなどから輸入され、その八割近くが遺伝子組み換えになっています。

 今年三月八日には日本共産党の岩佐恵美参院議員(当時)が、生物多様性条約に基づくカルタヘナ国内法の実施に関連して、鹿島港を現地調査。ナタネやトウモロコシの輸入実態と、種子のこぼれ落ちによる遺伝子汚染を参議院環境委員会で質問し、実態調査を要求していました。

 農水省はこれに応えて今回の遺伝子分析を実施。商業栽培の始まっていない、輸入国での遺伝子汚染が明らかになりました。

政府は全国的実態調査やり回収・撤去させる措置を

 私たちは、ずっと以前から遺伝子汚染の可能性を指摘し、農水省などに実態調査を要求してきました。今回の調査で、鹿島港周辺で自生が確認されたことは、懸念していたことが事実として裏付けられ、日本でも遺伝子汚染がすでに広がり始めていることを示す重大な問題です。

 岩佐・前参院議員の現地調査に同行したなかで明らかになったことは、(1)鹿島港では年間六百二十七万トンもの農水産物が荷揚げされる。(2)ナタネやトウモロコシなどをバラ積みした大型貨物船が港に横づけされると、ハッチからバキューム式の機械で搬出され、ベルトコンベアーでサイロに運ばれ、さらにここから各地の搾油工場などに陸送される。(3)流通業者の昭和産業によると、鹿島港に入ってくるナタネのほぼ一〇〇%がカナダ産の遺伝子組み換えカノーラである――ということでした。

 また周辺住民は、港から穀物を運んでくるトラックからナタネやトウモロコシなどが道路や側溝にこぼれ落ち、鳥がついばんでいるのをよく見かける、と言います。

 これらの事実からも、こぼれ落ちた組み換えナタネが自生し、世代交代を繰り返すうちに、アブラナ科の野性種や非遺伝子組み換えの国産ナタネなどと交配し、遺伝子汚染を広げていることは、ほぼ間違いありません。

 農水省の今回の調査では、「自生していた組み換えナタネが、世代交代を繰り返しているかどうかは確認できなかった」と逃げています。しかしナタネの花粉飛散は風や昆虫などによって数キロにも及ぶと言われており、数年にわたる世代交代と花粉飛散によって「すでに北関東一帯のナタネ畑には、西洋ナタネの遺伝子汚染が広がっている可能性がある」(国立環境研究所の研究チーム)と指摘されています。このことは、鹿島港のみならず横浜、名古屋、神戸、北九州などの輸入港や搾油工場の周辺に組み換えナタネが自生し、全国いたる所に遺伝子汚染が広がっていく可能性があります。

 生物多様性条約にもとづくカルタヘナ国内法の趣旨に照らしても、「加工原料用として輸入しているものが、落ちこぼれなどで栽培用種子に混入」することは、あきらかに違反です。政府は遺伝子組み換えナタネの実態調査を全国に広げて実施するとともに、モンサント社などに回収命令を出し、撤去させるなどの措置をとらせる必要があります。

(「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」 塚平広志)


組み換えナタネ自生は大問題だ

▼筑波大学元教授の生井兵治さん(受粉生物学)の話

 ナタネなどアブラナ科植物はもともと雑草になりやすい。農水省は、雑種は一般に増えにくいから、組み換えナタネが自生していても環境に影響しないと言っているが、雑種が生える環境によってまったく違ってくる。組み換えナタネが増えれば遺伝子汚染された花粉も多く飛び、生き延びる雑種も増える。組み換えナタネが一本あれば、その周りのナタネがみな交配することを考えれば、問題の大きさがわかる。

交雑防止など対策ぜひとも

▼岩佐恵美・前参院議員の話

 政府はこれまで遺伝子組み換え作物は実質的同等だから安全であるといい続けてきました。それが今回、環境省の実験データによって、根拠が崩れたことを国会で認めたことは重大です。食品安全委員会が実質的同等=安全ではないとはっきりいったのですから。

 長いこと国民をだましてきたようなもので、ひどいことです。

 今後、遺伝子組み換え作物の実験栽培規制や農作物への影響(交雑)を防ぐための対策が必要です。早急に法的枠組みをつくらせなければなりません。

(新聞「農民」2004.8.9付)
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2004年8月

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